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 魂のさけび(十六話)


  留美はあえて意識して山賊のボスとしての言葉を吐いた。
 「わかった、おまえのマゾがどんなものか見せてもらう。口ほどにもなければそのときはわかってるね?」
 「はいボス、感謝いたします」
  留美はふたたび二人に脱ぐよう命じた。いつまでも囚人にはしておけないし逃れられない運命を突きつけておくべきだろう。
  愛称ミーアは自らマゾだと言うだけあって潔かった。監獄で支給される白いパンティが黒い肌に浮き立っていて、一言で言って細身。背丈は175はあっただろうか、手足が長く、乳房は小ぶりだったが若く張って形がいい。
  もう一人の東洋系の娘は、立ったはいいが手が震えて青ざめている。脱がなければ剥ぎ取られるのはわかっていたし、そのときもしナイフでも使われれば着るものがなくなってしまう。日本人よりは浅黒く、独特のエキゾチックな雰囲気。背丈はミーアよりも頭一つ低く、肉付きもまあまあだったし、乳房もまあ豊かな方だった。
  男たちがいやらしく値踏みしながら見つめる中で脱いでいくのは恥辱。平然としているミーアとは違い、それが本来の女の姿であっただろう。

 「よろしい。二人ともお座り」
 「はいボス」とミーアは即答したが、もう一人の女はちょっとうなずくだけだった。頬はおろか体中に血筋の編み目が浮くように上気している。
  留美はそちらへ眸をやった。
 「おまえの名は? いくつだい?」
 「日本語わかります、少しだけ」
 「あら、わかるの?」
  留美も日本語。女が言った。
 「やっぱり日本人。そうじゃないかと思ってました。あたしはパナラット、二十七歳になります。タイ人ですが日本生まれ」
  流暢な日本語だった。パナラットは日本人ではないが言葉の通じる者はここでは少ない。しかしまさかの歳上。留美はまだ二十六なのだから。
 「両親がタイ料理のお店を神戸でやっていて、そのうちタイに戻りましたが、もうめちゃめちゃ」
  二十二メートルにもおよぶ海面上昇で東南アジア一帯は壊滅的な被害を受けた。
 「何をして投獄されたんだ?」
 「略奪にあいました。家が襲われて家族で戦い、でも弟までも皆殺しにされて、あたしだけが拉致された。逃げるときに酒瓶で男の人の頭を殴って、あべこべに通報されたんです。襲った相手がHIGHLYでした。ウチはもともとLOWERみたいなものでしたから」
  留美はちょっと目を伏せてうなずいた。
 「ここらは若い女の死体が普通に転がるところ。生きたいなら心して臨むように」
 「覚悟はしてますが怖いんです」
  パナラットはそれきりうつむいて声も出さない。

  留美はそこでも山賊のボスの言葉を言い放つ。
 「もういいだろう、そっちのパナラットはどうにでもしてやりな。ミーアは私といらっしゃい」
  留美が洞穴の奥を顎でしゃくって、ミーアが立つと、新入りのカルロスまでを含めた男たち八人が一斉に立ち上がり、パナラットの腕をつかんで立たせると、無造作に白いパンティを剥ぎ取って連れ去っていく。
  そのときパナラットに悲鳴はなかった。恐怖で声さえ出せないようだ。
  洞穴の口まで十メートルほどを歩く間に、絹を裂くような悲鳴が聞こえた。
 「きゃぁぁーっ! ああどうかぁ、服従しますからどうかぁーっ」
 「だったら尻を突き出せ、ほらぁ!」
 「あっあっ、あぅ! あぁぁーっ、きゃぁぁーっ!」
  留美は背後についてくるミーアに背を向けて一瞬眸を閉じて唇を噛んだのだったが、すぐに平静を装った。

  懐かしい洞穴へと踏み込んで、亮のいた横穴へ迷うことなく入っていく。
  あのときのままの景色。シングルベッドから剥ぎ取ったクッションと、その前に申し訳程度のカーペットの切れっ端。しかしそこには毛布さえない。ここを出るときに持ち出してしまっていた。
  何かもが亮の姿に結びつく。匂いがすると留美は感じた。
  クッションに腰掛けて、突っ立つミーアを見上げてみる。
 「ミーアキャットか、なるほどね、似てるかも」
  ミーアはちょっと笑った。きょとんとして突っ立つ姿が可愛い気がする。
 「さあ、私がマダムだと思っていつも通りにやってごらん」
 「はいボス」
  白いパンティを躊躇なく脱ぎ捨てて、そしたらデルタに陰毛がない。
 「毛は?」
 「生まれつきなんです。私は産まれながらのマゾなようで」
  そしてミーアは新しい主の足下に膝を開いて立つと、両手を頭の後ろに組んで胸を張る。小ぶりの乳房だったが誇張されてなおのこと形がいい。ミーアは命令を待つようにまっすぐ見つめて動かない。黒い肌のデルタに女の亀裂が浮き立っている。
  留美は両手でそっと小さめな乳首をつまんでコネてやる。
  ミーアはうっとり目を閉じて鼻孔をひくつかせ、ん、ん、と甘い声を漏らしはじめた。
 「おまえは傷がないね?」
 「はいボス。マダムはやさしいお方でしたし、責められなくなってずいぶん日にちが経ちますから」
 「寂しいだろう?」
 「はいボス。たまりません寂しくて。あぁぁ感じます、ありがとうございますボス」
 「ふぅむ」
  なんてこったい。それが正直な留美の気持ちだった。そして同時に、ガレージの牝豚にもこうなってほしいものだと考える。極刑ではあっても虐待を性的趣向に置き換えることができれば、それはそれで幸せというもので。
 「気持ちよくて濡れてきたかい?」
 「はいボス。はぁぁ、はっ、あはぁぁ」
 「感じる体だ」
 「はいボス。マダムに躾けられてきましたから。乳首にちょっと触れられるだけで濡れてしまって笑われたものでした」

  黒く若い肌を爪先で掃くように撫で下ろし、カギ状に曲げた指先をデルタの奥の開かれた股間へと突きつけてやる。ミーアは自らさらに脚を開いて恥骨を突き上げ、愛撫をせがむ。花弁は薄くしかしクレバスから飛び出していて、クリトリスも大きい。こりこりとした感触であり、花弁は濡れをからめて閉じていられず、パッと咲いて留美の指を受け入れた。
 「ンぅ! ンふぅ、ああ感じます、嬉しいですボス、ああボス気持ちいい」
 「そのボスボスっての、やめてくれない。留美よ。二人のときはそう呼ぶように」
 「はい留美様、あぁぁ女王様、気持ちいい」
  息が熱い。まさぐるうちに洪水になってきて、腰が揺れ、尻肉がきゅっきゅと締まって前後に動く。黒い裸身が見る間に汗ばみヌラヌラとした輝きを放ってくる。
 「どうやら本物のマゾらしいね」
 「はい留美様、マゾでございます」
 「鞭打ちも嬉しい?」
 「はい、イケます私、鞭でイケます」
 「ふうむ・・あっそ」

  こういう女もいるんだと思うと、心の角度というものを考え直さなければならなくなる。ミーアは控え目なトーンで言った。
 「留美様、あの」
 「なんだい?」
 「夢はご褒美、それが悦び」
 「わからないよ。よくはわからないけど、そうよね、私が甘いと安住できない」
 「はい留美様」
 「人は深いわ。会う人会う人それぞれ違うし、でもそうよね、ハンパなことでは女なんてやってられない。女の性は命がけ。だけどよ」
 「はい留美様?」
 「だとしたらおまえはバージン?」
 「はい留美様。ペニスという意味でならバージンです。ディルドとかさんざん使われて可愛がってもらえましたが」

  そこまで言うなら気の済むようにしてやろうと留美は思った。
 「わかった、可愛がってあげるわよ。仲間に女はたくさんいるし、困り果てる牝豚も飼っている。ミーアと出会えたことが嬉しいわ。気が済むまでマダムを想い、振り切れたらそのときには男たちもたくさんいる」
  カギ状に曲げた指先を動かしてはいなかった。なのにミーアの腰がせがんで動き、ミーアは達していくのだった。
 「あぁぁ、お許しください、どうか・・あぁぁイクぅ、イクぅ・・」
  可愛いものだと留美は思った。
  私はボスには向かない。やさしすぎるとは思うのだったが、ゆらりと崩れるミーアの体を抱いてやりたくなってくる。
  燃えるような息を吐いて崩れたミーア。留美はそっと抱き寄せて、とろりと溶けた眸を見つめると、口づけをしてやった。
  そのときミーアの大きな目に見る間に涙が溜まっていって、あふれだして頬を伝う。
 「嬉しいのね?」
 「はい留美様、夢のようです。諦めていたのに嬉しいです女王様」
  留美はちょっと鼻で笑った。馬鹿馬鹿しいほどピュアな女。妙なヤツ。

  女王様か。もしかしたらあの牝豚もそう呼ばれていたのかしら。タイパンのクイーンではなく、SMという意味での女王として。ふとそんなことを考えてしまう。
  そろそろ時間。ルッツタウンまでは少し遠い。
 「もういいわ、出ましょう。おまえはずっと素っ裸のままですからね、奴隷らしくしてなさい」
 「はい留美様」
  嬉しそうなミーアの面色。
  そして外に出てみると、少し離れた岩陰からパナラットの喘ぎが響く。男たちは数が多い。広場に出て、しかし少し風が出て冷えてきていた。
 「ミーア、とりあえず服を着なさい」
 「え、でも」
 「いいから着なさい、ちょっと寒いわ」
 「はい留美様、心よりお仕えいたします、おやさしいボスでミーアは幸せです」
  呆れて顔を見てしまう。

  と、そのとき。『ああ狂っちゃうーっ! きゃぁぁーっ!』

  その声を最後に女の声が失せていた。いまは冬、緑も薄くなっていて、木はどれもが裸の景色。蛇もいまは冬眠だろうと考えた。
  大きなバートが、気を失った全裸の女を軽々かつぎ、尻をペシペシ叩きながら歩み寄る。肩の上でくるりと裸身を回してやって立たせると、軽く頬を叩いてやって気づかせる。
  白い尻の間からおびただしい精液が腿を伝い流れている。パナラットもまたとろんと溶けた面色だった。
  バートが言う。
 「服を着な、冷えるぜ」
 「え、着ていいんですか?」
 「嫌ならやめとけ」
 「もう冷たい・・なによっ」
  すでに甘えていると留美は感じた。女はタフだ。適応ではなく性への受動。運命を受け入れて生きる、それが女。私もそうだと言い聞かせる留美だった。
  歩き出す前に懐かしい景色を見回す留美。亮が町に出たがらなかった理由がわかる気がする。俺は山賊、野蛮な男・・そう言い聞かせていないと苦しくなる。亮は本質のやさしい人だった。
  ここがもしルッツタウンだったとしたら、保護したつもりの女たちを、その上さらに辱めることはできなったに違いない。

 「はぁぁ・・ふふふ」
 「何が可笑しい?」

  鉄箱に女二人とマットを乗せた大型軍用ジープの運転席と助手席。留美の妙な笑い声にバートが応じた。
 「こう次々に女が増えると男たちと釣り合ってくるなって思っただけよ。バートは誰が好みかしらね。マルグリットもキャリーも美人だわ。ウチは男は野獣でも女たちがみんな可愛い。パナラットはどうだった?」
 「腹が据わってら。人買いの先に何があるか考えないほど馬鹿じゃねえ。あんときカルロスの言葉も聞いてやがったしな」
 「私らが仲間だってこと?」
 「売り買いされたわけじゃねえんだよ。山賊に拉致されて、しかし仲間として生きていけそう。売られた身よりはましってもんよ。尻を振ってよがってやがった、可愛いもんだぜ。しかしたとえ数で逆転しようが女は男たち皆のもの」
 「わかってる、おのずと決まっていくまでは」
 「そういうこったが、まあ俺は、おまえだ」
 「え?」
 「好みはおまえだと言っている」
  留美は、前を見たまま言って前を見たまま運転するバートの横顔を見つめていた。

 「ねえバート」
 「今度はなんだい?」
 「私ね、正直言って私はダメだと思ってた。ボスに向かない。こんなのおかしい、女はオモチャじゃないんだよっていまでも思うし、あの牝豚のことにしたって可哀想で見ていられない。いっそ殺してやったほうがいい。だけどルッツやアニタのことを思うと許せなくなってくる。どうしていいかわからない。とそう思ってたんだけど、私は今日はじめて人を撃った。殺してしまった。魔女だわ私。あの牝豚とどこがどう違うのって思っちゃう」
  バートは声を出さずに笑っている。
 「でもよ、こんな私に折り合いをつけていくのは私自身だわ。その程度のことを決められなくてどうすると思う」
  バートはそれきり口を閉ざした。それは留美にとってやさしさでもあったのだが同時に厳しさでもあった。
 「だからねバート、ボスとして私が決める。ついてきて」
 「おぅ、わかったぜ。マットの野郎が言ってやがった」
 「マットが何をよ?」
 「女神だってよ」
 「ふふふ、ばーか、それはあの子がマゾっぽいだけ。どいつもこいつもケダモノかド変態。だから決めたの、私もケダモノになってやるって」
  バートはまたちょっと笑い、それきり前を見て口をつぐんだ。

  その日は夜になって雨になった。雨雲が空を覆うとむしろ暖かい。
  夕食を済ませ、男たち女たちが相手を選んで部屋にこもり、ルッツの店は穏やかに闇に凪ぐ。
  夜のガレージ。
  冬のいま牝豚は裸ではなかったし、ジョアンに面倒をみてもらい、それなりに清潔にされていた。ジョアンが張り付くようになってからマットもだいたいそばにいて、つまり他の者たちにとっては手が出しにくい。それでも牝豚の体から浅い鞭痕が消えたことはなかったし精液の匂いがまつわりつく。嵌め殺しのステンレスの首輪には常に太いチェーンがかけられていて柱のH鋼につながれている。
  牝豚に堕とされてから日々は過ぎていき、しかしなお牝豚の眼光に生気はなかった。
 「タイパンのボスだった女だよ。ルッツもアニタも、私の前のボスも殺された」
  留美が言い、一歩退いたところにジョアンがいて、連れて来られて着るものを与えられたミーアがいた。パナラットは男たちが連れ去っていたし、この場にマットの姿もなかった。同性ばかり。留美にとっては三日ぶりに見る牝豚の姿。
  ジョアンが言った。
 「素直にしてますよ。ほらボスよ、脱ぎなさい」
 「はい」
  男物の古い厚手のロングコート。脱げば全裸。体中に凄惨な責め痕は残っていたが消えかけている傷ばかり。肉付きのよかった裸身もずいぶん痩せて頬がげっそりコケている。
  裸になると牝豚は身を丸めて留美の足下に平伏した。

  そんな奴隷を見据えたまま留美が言う。横に立つミーアに向けた言葉だった。
 「どう思う、この姿?」
 「残酷ですけど、でも、もし私なら嬉しいでしょうね」
  信じられない言葉に、横にいるジョアンがミーアの横顔を覗いている。
 「ちょっといいですか?」
 「いいよ、どうなりとしておやり」
  留美はジョアンの手を引いて一歩二歩と後ずさる。この処遇にせめてもの光を与えられるのはミーアだけ。男たちはともかくも女たちのほうが扱いに頭を抱えている。ミーアならどうするか。
  真新しいブルージーンに赤いセーター。ミーアもまた見違えるほどすっきりした女に変身していた。ミーアは、正座をして見上げる牝豚の前にしゃがみ込む。
 「私もこうだったのよ、マダムを見上げてただ一心にお情けを求めていた」
  牝豚が眸をわずかに大きくして見つめている。
 「私はマゾ。二十二ですけどバージンなのよ。マダムというか女王様に躾けられていた奴隷です。白くて綺麗な乳房ね、羨ましい」

  そう言いながら両手をのばし、二つの豊かな乳首をつまむとそっとコネてやるミーア。
 「こうされると気持ちいいよね、嬉しいよね」
  牝豚がかすかだったがこくりとうなずく。
 「生涯おまえは囚人としての責めからは逃れられない。ほうら、こうして爪を立てていく」
 「むぅ!」
 「ふふふ痛い痛い。でもね牝豚、こう言いなさない、気持ちいい、もっとください。さあ言ってごらん」
  両方の乳首にギリギリと爪が食い込みコネられる。
 「むぐぐ、はい、気持ちいいです、もっとください」
 「あら、もっと? こうかしら?」
  さらに力が込められて、乳首がひねり潰されていく。
 「ぐぎぎ、むぐぐ、気持ちいいです、もっとください」
 「うんうん、いい子よ、よしよし、よく言ったわね」
  指先から力が抜けて、ふたたびそっとコネられる。
 「あ、あぁ、むぅン」
 「ほうら甘い声になってきた。頑張ったご褒美なのよ、わかるでしょ」
 「はい」
 「私はミーア」
 「はいミーア様」
 「それだけ? ありがとうございますは?」
 「はい、ありがとうございますミーア様」
 「よろしい、いい子ね牝豚。痛みも屈辱も与えられる何もかもがおまえを浄化していくものなの。耐えて耐えて泣いて泣いて、いつか抱いてもらえることだけを希望として頑張るの。わかった?」
 「はいミーア様、ありがとうございます」
 「ほら言える。感謝の言葉をいつも心に持っていないと責めは拷問でしかないものよ。主が男性ならば犯されることは最高のご褒美なんですものね」
  そう言って、ミーアは牝豚の裸身をそっと抱き、白い背中に両手の爪を立てて引っ掻くようにする。
 「あーっ! 痛いぃ、じゃなくて気持ちいいですミーア様」
 「よろしい、それでいいの。責めてもらえることがどれほどの幸せか。放置されて誰にもかまってもらえない孤独がどういうものか。これからはよく考えて、ただし媚びてはダメですよ、媚びはいやらしい。わかりましたね」
 「はいミーア様、ありがとうございます」
 「そうそう、いい子だわ、よしよし」

  そう言われて今度こそそっと抱かれ、ミーアの肩越しに留美やジョアンを見つめる牝豚の眸に見る間に涙が浮いてくる。
 「嬉しいみたい」
 「そうですね、いい顔してる。はじめて見た貌だわ」
 「うむ。甘いとは思うけどさ、でもダメだわ、わからなくなっちゃった」
  留美はジョアンの背をちょっと叩いて背を向けた。
  そして戸口へ歩いて行くと、アルミのドアが少しだけ開いていて、光の漏れる薄闇の中にコネッサの眸が見えた。
 「悪いけど覗き見させてもらったよ」
  留美はうなずいてコネッサの腰を押し、足を前へと踏み出した。
  留美は言った。
 「やさしいんだからコネッサも」
 「そうじゃねえよ、誰が・・ちぇっ。けど、あんなふうに悦びを見つけてくれるんだったら、あたしらの責め方も変わってくるさ。あたしだって人間なんだよ」
  内心辛くてならない。あしざまに言う者ほど、辛くて、その裏返しにひどい言葉を吐くものだろうと留美は思い、そのとたん、わけのわからない性欲に取り憑かれてしまうのだった。
 「このままお部屋へ。抱いてコネッサ」

  静かな邸内にかすかだったが女たちのイキ喘ぐ風が流れていた。