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時代劇というと江戸時代より前のお話と思われがちですが、自分が生まれ
育ったちょっと前の時代、たとえば昭和の初期だったりするのですが、そこ
へいくともはや時代劇なんですね。
同じように未来を描くとSF? それも違う。十年後の自分を想像してみて、
サイエンスフィクションであるはずがない。したがってそれも時代劇の範疇。

えー、疲れます。現代を書くほうがラクなんですよ、いろんな意味で。

でもそこが時代劇を書く愉しみなんですね。苦しみとも言えますが、書いた
後に何かが残る。
たとえば門。武家屋敷の門、寺の門、そのほか門。現代にも残っていて、
テレビなんかでもよく見る門。閉ざされた門の横に小さな出入り口がある、
アレですよ。

黒瓦ののった門は閉ざされ、その横の小さな通用口からも入れなかった。
意味はわかる。しかしこれを、
黒瓦の腕木門(うでぎもん)は閉ざされて、脇戸(わきど)もまた開けられず
・・と書くと、小説に味が生まれると思いませんか。

これは単なる知識じゃない。日頃見て知っているものと結びついて刻まれ
る。だから忘れないし、いちいち調べる気にもなる。まして僕など無知です
ので、それなりの発見があるわけですね。それが時代劇を書く愉しみ。

草稿では細部を省いてとにかく通し、後になって推敲するとき書き足してい
くでもいいでしょうし。

白き剣でも、ほんとのところは頭を抱えて書いてます。草稿はもうすぐ終わ
る。だけどそっからが問題なんですよ。江戸中期を生きた辰巳芸者なんて
いませんから誰に訊けばいいんだよってことになる。

白き剣で、僕は白旗。