十二話 鉄のゆくえ
「槍を錆びさせるとは武家も堕ちたものだ」
宗志郎は小声で言って闇の虚空を見つめていた。
翌日の艶辰の夜。宗志郎のために支度された部屋に独り。忍び寄る女の気配を感じ、宗志郎はそんな考えを中断した。
襖がそっと開いて灰鈍色(はいにびいろ)の寝間着姿の黒羽が入ってくる。今宵の黒羽は少し帰りが遅くなり、湯から出たところであった。黒羽は静かな闇の中に横たわる末様の隣りへ音もなく寄り添った。
「温かい」
「いま湯から」
「うむ? そうじゃない、この艶辰のこと。夕べも鷹羽が泣いていた。女将さんに羽をもらったなと言うと、そっと背を向けて泣いているようだった」
「抱いてやればよかったのに」
「それでいいのか?」
そっと抱かれ、背を撫でられて黒羽はちょっと笑うのだった。
「あたしを気にして?」
末様は応えない。何かを言えば無粋というもの。
「しかし」・・と言って宗志郎は、女の柔肌とはまったく逆にある武士の武器を考えた。槍や鉄砲を錆びさせる武士の堕落。太平の世が弛めてしまった武士の心。それは外様よりも親藩や譜代に顕著。徳川の世が定まって外様どもは諦めの境地。そしてそれが徳川方の備えを増して弛めてしまった。
宗志郎は言う。
「庭番の世か」
「忍びなど無用の長物」
「まあそうだ。鷹羽が言っておったよ、仕えた主家では蔵で槍が錆びていると」
「今度のことも、そのへんに不満を持つ者どもの仕業かも」
「あるいはそうかも知れぬ。刀が折れると嘆いておった」
「刀が折れる? どなたが?」
「城中の者どもさ」
「それもまた太平の世の移ろいかと」
黒羽は抱きすがる末様の背をそっと撫で、その手が降りて引き締まった男の尻をそろそろ撫でる。
刀というもの、鋼(はがね)でつくる。しかし慶長の頃というから江戸幕府ができる頃にその製法が変わってしまった。製鉄の技術が進み、混じりものの少ない刀の地金ができるようになると、鋼は硬度を増して切れる刃となっていく。
けれども硬くて切れる分、折れやすくなってしまい、当時の刀鍛冶は粘りのある鋼を抱き合わせるなど工夫を凝らして折れにくい刀をつくったものだ。
しかるに太平の世が続き、刀を持つ意味がなくなると技能に優れた刀鍛冶も減っていき、未熟な刀工がつくった刀が折れやすくなってしまったのだ。
慶長以前の古い刀を『古刀』と言い、それ以降を『新刀』と言って区別している。古刀は鋼に不純物が多い分、粘りがあって折れにくく、またその頃は優れた刀工も多くいた。これは鉄すべてに言えること。したがって古い武器や古釘、農具など、古い鉄が高価で取り引きされたものである。
しかしこのとき、宗志郎も黒羽も、話の成り行きでそこへいったに過ぎなかった。
闇の中で抱き合って目を見つめ、唇を重ねていく。末様の手があやめの寝間着に忍び込み、あやめの手が末様の下穿きに忍び込む。
二人横寝になったまま、あやめはくるりと後ろを向かされ、背越しに抱かれて白い乳房を愛される。
「ぁぁ末様」
乳房を愛され、うなじにそっと男の唇が這い、黒羽はふるふる震えだす。
乳房をくるんだ片手が滑り、鳥肌の騒ぐ素肌を撫で降りて、性の飾り毛を撫でられて指先が女の谷底へと降りていく。
「く・・」
声を噛むあやめ。腰を張って尻の谷を強く勃つ末様に押しつけて、黒羽の女体がしなやかに反り返る。
あやめの花はおびただしく蜜を流し、寝間着の尻がめくられて黒羽は手を噛み声を殺す。熱い熱い強張りが尻の谷越しに性の花を蹂躙し、ぬむりぬむりと黒羽を犯す。
「んっ・・くぅ」
どこか遠くへ行ってみたい。淫らな声を吼え散らして達してみたい。
「あやめ」
「末様、あぁぁ末様ぁ」 と甘く喘ぎ、そして黒羽は言う。
「鷹のことも可愛がってやって。あたしとおんなじ。鷹だって末様が好きなんだから」
馬鹿なことを言うんじゃないと言うような鋭い突き上げが女体の奥底までをも貫いた。
「ぁむぅ!」
白い尻が振り立てられて黒羽は夢の空へと羽ばたいた。
そしてその頃、美神の寝所。
今宵も座敷でさまざまあったお艶さんの三人娘が、一糸まとわぬ美神の裸身に群がっていた。達しても達しても次々に襲う性の高み。美神は女体のすべてを与え、泣いているかのようにとろんと眸を潤ませているのだった。
気が遠くなる高みに耐えて己を捧げ、それからも美介彩介恋介の白い腿を開かせきって、それぞれの花蜜を吸い取るように舐めてやる。
四人の裸身が絡み合い、そのまま眠りに落ちていく。そうして眠って翌朝になると、座敷であったすべてのことが忘れられ、若い三人の女たちは美神によって洗われる己を感じて生娘の心に戻れるのだった。
艶辰の中でたった一人、お光だけは、美神に尽くすだけで褒美をもらったことがない。お光には男芸者の二人をあてがう。お光の若い花までは犯さないというだけの男女の肌合わせ。お光にはそれがいいと考えた美神であった。
お光にだけは艶辰の役目を背負わせたくないのだが、そのお光は剣の稽古に励んでいる。心苦しい美神だった。
翌日もまた冬晴れで江戸の空に雲がない。それなりに寒くても風がなく、陽射しが冬を春へと押しやっているようだ。
末様とあやめは永代橋を渡って歩き、八丁堀の縁まで来た。そのときそこに黒羽も知らない刀剣の店ができている。いつの間に。
「こんなところに刀。ここは確か米屋だったと思うのですが」
刀剣『美鈴(みすず)』という板焼きの刻印のある看板が上がっていて、その店の少し奥に刀や匕首が並べられていたのだった。その中の白木の鞘におさめられた一刀が目についた宗志郎。いい刀は仕込み杖のようにして置かれてあって鞘や柄は刃の保護のため。鞘や鍔は別に好みを選んで刀に仕立てるものである。
「これはいらっしゃいませ、お武家様、奥様も」
店の主人らしい四十年配の男が腰を低くして言う。
奥様と呼ばれた黒羽は恥ずかしい。一歩退いて店の中を見渡していた。
このとき宗志郎は普段着の着流しだったが一見して凜々しい武士。片やの妻も、あたりまえの姿でも品がある。これは上客と店主は思ったのかもしれなかった。
刀剣の美鈴はできたばかり。店の中に真新しい木の香りが漂っている。
宗志郎は白木の鞘におさまった一刀を取り上げた。横一文字に拝み取り、そっと刃を抜いてみる。
「これは」・・と言ったきり声をなくした宗志郎。そばにいて覗き込む黒羽の目もキラと光る。
その刃文(はもん)は、鎌倉時代を思わせる華やかな重花丁字(じゅうかちょうじ)と呼ばれるもので、鍛え肌は杢目(もくめ)。鍛え肌とは刀工が鉄を叩いて整形するときにできる地金そのものに浮き立つ模様のことである。
「ふうむ、見事なものだ」
店主は腰を低くして笑う。
「さすがでございますよ、お武家様は。それほどのものは滅多にそこらにございません。それは備前(岡山あたり)の刀工、定晴(さだはる)の手になるもの。歳は若くしてなかなかの腕を持つと評判なのでございますよ」
「そうか定晴と言うか。うむ、これは見事だ。これほどのものは滅多になかろう」
鞘を黒羽に預けておいて、宗志郎は剣を構え、その重さの配分もこれよりないというほど素晴らしい。
「していかほど?」
「三十と申したいところ、お武家様はお目が高く、お刀にふさわしき主かと。よろしければ二十でいかが? 鞘と鍔、それに小柄(こづか)もともにということで」
これで二十両は安い。一両の価値はモノによっても変わるものだが、およそ十数万円だと思えばいい。つまり三百万円弱となるわけだ。これほどの刀であれば三十してしかるべき。そこらの武士の刀はせいぜい数両で求められるものであり、それらとは格が違う。
店主は言った。
「それは鍛え直しの一振りでして、古鉄(こてつ)の薙刀二柄(なぎなたふたえ)を刀の一振りに鍛え直したもの。ゆえにお安くはできませぬ。まず折れもせず刃こぼれもせず、無名ながら胸を張っておすすめできる名刀かと存じます」
黒羽もそう感じて刃を見つめた。これは古刀の名刀にも匹敵する見事な一振り。宗志郎様にこそふさわしいと思って見ていた。
しかし安くても高い。
宗志郎は言う。つい昨夜考えたばかりのことである。
「古鉄の薙刀を鍛え直すと?」
「左様でございますとも。西方のある藩が武具の入れ替えのため下げ渡した薙刀で鍛え直した一振りで。物の価値と申しますが、失礼ながらお武家様方は錆びた古鉄とすぐにそうして見放してしまわれる」
「ううむ、左様か」
このとき宗志郎の中にもやもやとした思いがあった。そうやって捨てられる刀剣がどれほどあるのか。そしてそれらが、いまの刀剣よりも優れた刀となって蘇る。それをいったい誰が手にするのだろうと。
しかしこのときもまだ、ふと思ったまでのこと。
見事な刃に目を細め、そっと鞘におさめる宗志郎。宗志郎の腰にあるいまの刀も新刀。それはそれで見事なものだが、くらべるとやはり格が違うと黒羽は思った。
黒羽は言った。
「ではそれを青い鞘に仕立てておくれ」
「青でございますか?」
「青が好きです、空の色」
宗志郎は黒羽を横目にするのだったが、「それはあたしが」と言うように黒羽はちょっとうなずいた。
店主は言う。
「かしこまりましてございます。では十日ほどお暇をいただいて、さっそく名工に委ねましょう」
鞘や柄(つか)には、それを専門とする職人がいるものだ。
「今日のところはこれで」と言って、黒羽は手付けの三両を手渡した。
店を出てから末様が言う。
「確かにあれは欲しい刀、金は俺が用意する」
「いえ、それはあたしが」
末様は微笑んでうなずくと黒羽の肩をそっと抱いた。金は俺が用意する。あやめの心が嬉しかった。
伊豆から戻って数日また数日。師走となっても暖かな日々が続いている。
あれから鷺羽鶴羽鷹羽のくノ一三人は艶辰に戻っていない。芸者として以外の出入りが目立つと目をつけられることにもなりかねない。忍びとはそうしたもので、役目が与えられると何かをつかむまでは戻って来ない。
宗志郎の末様ぶりも板についてきていた。艶辰にいるとき侍言葉が出なくなる。下々という言葉があるが宗志郎はそれを嫌う。そうした末様の人柄が界隈でも話の種になっている。黒羽と出かけることが多く、黒羽のいい人らしいと噂になった。
朝の稽古。真新しかった木綿の生成りの忍び装束が着慣れてこなれ、お光にはよく似合う。鷺羽鶴羽鷹羽の三人がいなくなって、稽古のほとんどは剣か棒。今朝は紅羽が棒を握って対峙する。長さ五尺ほどの八角棒で、それはちょうど僧が持つ錫杖(しゃくじょう)によく似ていた。
「もっと腰を沈めてやわらかく」
「はい!」
棒を槍のように突き込むが、そんなものは紅羽の敵ではない。あしらわれ、横をすり抜けられて尻を打たれる。ぎゃっと悲鳴を上げてお光は転がり、尻をおさえてのたうっている。
末様が座って見守り、今朝はその両隣りに黒羽と美神が座っていた。男芸者の二人とお艶さんの三人娘はこれほど激しい稽古はできない。色が売り。体に傷を残すわけにはいかないからだ。
そんな中で一人だけ、下働きのお光であれば厳しく鍛えていける。お光もまた眸の色が違う。死に物狂いで立ち向かう。
末様が小声で言った。
「スジがいい」
美神が言う。
「もう少し早けりゃね」
お光は年が明けると数えで十八。修行をはじめるには少し遅い。それがわかっているからお光は懸命にやっている。
黒羽は目を細めて見つめている。日々の鍛錬で甘えが消えて、きっといい芸者になると思えたからだ。三味線も踊りも稽古は厳しい。箸ひとつ使うにしてもできなければ話にならない。お光はここへ来たとき箸さえまともに使えなかった娘である。
お光の気合い。
「トリャァァーッ!」
カン、カーン! 乾いた樫の棒が交錯していい音を響かせる。打ち込みが鋭くなった。お光はすばやく体をさばく。猫のようだと黒羽は感じた。
「まだまだ!」
バシィィと、したたかに尻を打たれ、棒を取り落として尻を押さえ、跳ね回るお光。
「もう一本!」
「よし、かかっておいで!」
カン、カン、カーン! 突きを跳ねられ、しかし棒を回して地から振り上げ、また回して天から振り降ろす。勘がいい。いっぱしの型になりつつあると末様は微笑んだ。
しかしまたしても尻を打たれて転がって、逆エビに反り返ってじたばたもがく。
泣きながらの稽古であった。
「痛いのはあたりまえ! 棒を放すな! 諦めてどうするか!」
「はいぃ!」
地べたを這うようにして棒に取り付き、立ち上がって構えるお光。
「よし、それまでにしておこう」
紅羽がやさしい姉様に戻るとき。
「はい! ありがとうございました!」
「だいぶいいよ。着替えて姉様たちを手伝うんだ」
「はい」
笑って深く一礼するお光を見ていて、美神は震える思いがする。こんな娘を手籠めにする輩が許せない。敵が禿だろうと生かしてはおかない!
その日、宗志郎は一度は城に登ったものの早々に引き上げて、川向こうの小さな家を覗き、甘い菓子の包みを置いて、艶辰に帰り着く。夜となって冷えてきていた。黒羽も紅羽も、お艶さんの三人娘も今宵はいない。男芸者の二人と美神がいて、それに加えて宗志郎。それからもちろんお光も残る。
美神は「さてお光」と言って手招きしながら立ち上がり、自らの寝所へ向かう。
お光に布団をのべさせておき、美神は一糸まとわぬ姿となって横になる。お光は声もなく、あまりに美しい裸身を見つめる。
「さあ、脱いでおいで」
「はい女将さん」
裸になったお光の尻と言わず背と言わず、激しい稽古の青い痣が残っていて、美神は、ふわりとやさしい乳房の谷に抱いてやり、痛いはずの背や尻を撫でてやる。
「おまえはよくやってるね、いい子になったよ」
「はい。嬉しい女将さん」
「うんうん。さ、あたしを可愛がっておくれ」
「え・・」
抱かれて口づけ。それから美神はうつぶせに一度寝て、腰を上げ、犬のように這っておいて、すべてを晒した。
「よく舐めて、あたしが達するところまで」
「女将さん、あたし嬉しい、ぅぅぅ」
泣いてしまうお光。
「ふふふ、しょうがない子、いいわ、おいで」
美神に手を取られて下に寝かされ、若い乳房を揉まれて乳首を吸われる。
「あぁん女将さん、震えますぅ」
膝を立てさせ、濡れる花をひろげておいて、美神は逆さにお光をまたぎ、甘く濡れる美神の花をお光の口許へと押しつけていく。そしてそうしながらお光の花園へと顔を埋めて舐めやる。
「あぅ、女将さん、そんな」 と喘ぎながら、お光の裸身が反り返ってふるふる震える。けれどもすぐに弾かれたように顔を上げ、突きつけられる美神の花へと舌をのばして吸い付くように顔を埋める。
「んふぅ! あぁぁ心地いい、お光は可愛い、可愛いんだよ、お光」
「はい、ありがとうございます。あぁん女将さん、あたしも震える。はぁぁ!」
お光はその夜、美神の夜具で眠りについた。
そしてちょうどそんなとき、川向こうの宗志郎の小さな家に柿茶色の忍び装束を着た鷹羽が戻る。探れど探れど、これといったものがない。敵はいまのところ動いていない。次の餌食が出る前に。そうは思ってもどうすることもできなかった。童を連れた母親らしき女などそこらじゅうにいるのだから。
鷹羽は、美介が聞き込んだ旅籠のある奥州街道沿いを張り、鷺羽は紀州屋敷に近い甲州街道への道筋、鶴羽は日本橋から南にあたる東海道の道筋を。
そうやって手分けしても、たった三人ではどうにもならない。
今宵もまた手ぶらで戻り、しかし卓袱台に置かれた菓子の包みに微笑んで、まずは風呂。あがって寝間着に着替えたときだった。そのとき刻限は、暁の九つ(午前零時半)を過ぎていた。
茶を淹れて卓袱台に置き、菓子の包みに手をかけようとした、そのとき、小さな家の戸口に忍び寄る気配を察し、鷹羽は跳ねて転がって黒鞘の忍び刀に手をかけた。
「誰か?」
「開けてみよ、敵ではない」
ひどく枯れた老爺の声。しかしいま時分、そんな老爺がなぜ?
刀を手に戸口に潜んで気配を探るが、気配は一人。
「開けよと申しておるではないか。探りの先にあるものを持って来てやったのじゃぞ」
「何・・」
敵ではなさそうだと感じたものの、こちらの探りを見透かされてしまっている。
相手は老爺。開けてもし敵なら斬る。鷹羽はそう思い、そっと引き戸を開けてやる。
と、そこに、身の丈五尺(およそ150センチ)そこそこの枯れ木のような老爺が立っている。まっ白な垂髪、干し柿のような顔の中に落ちくぼんだ目が二つ。そしてその手に仙人が持つような螺旋竹の杖を持っている。
老爺はちょっと微笑むと戸口をくぐって中に入り、後ろ手で引き戸を閉めた。
「禿を伴う女では探せど探せどあてなきこと」
「そなたは何者か?」
「見ての通りの枯れ木じゃよ。このわしが何を言おうと信じまい。邪視とはこうしたものよ」
老爺が上目使いにキッと目を上げると、どうしたことかその刹那、鷹羽の体から力が抜けて手にした刀を取り落とす。呆然と見つめたまま身じろぎひとつできなくなった。
「脱ぐがよい」
「・・・」
寝間着の帯を解いて肩から落とすと下は素裸。白く美しい女の裸身を隠すでもなく、ただただ呆けたように立つ鷹羽。
「ふむ!」・・と老爺が気合いを込めて唸ると、またその刹那、鷹羽に正気が戻っていた。
「ああ! あぁぁそんな・・」
なぜ素裸になっているのか。鷹羽は白い乳房を掻き抱いて板床にへたり崩れた。ほんの一瞬、心が消えた。そうとしか思えない。
「どうじゃな、信じようとするか、否か?」
鷹羽は幾度もうなずいて、乳房を抱いたままで言う。
「では、あなた様も風魔? もしや悟郎太から?」
「悟郎太と? ふっふっふ、そのような者は知らぬわ。まあよい、寝間着を着なされ。すまぬことをしたな」
「あ、はい・・」
身の毛もよだつ恐ろしい技。剣などではとても勝てないと慄然とする鷹羽。