2017年02月07日

DINKS~フリーランサー(三五話)


三五話


 きらきらと濡羽黒に煌めくロングドレスのサリナ。このとき留美は、これほどの女性を奴隷にできる友紀の凄さを見たような気がしたのだが、友紀は、そんなサリナを誇らしく思うと同時に、とても私なんかが君臨できる人ではないと考えていた。サリナのフォーマルドレスをはじめて観る友紀だった。君臨するのはサリナだわ・・なのにどうして? 愕然とする思いだった。

 天空の部屋は広く、ゆったりとしたツイン。時刻は三時に少し前。今日は泊まると決めていた。留美は心臓が乱れ打ち、緊張がピークに達して声も出ない。遅れてきた二人を迎えた女王は、はじめて接する留美の肩に両手をやって穏やかに微笑んだ。留美は吸い込まれるように見つめられて眸がそらせない。
「ふふふ、緊張しちゃって・・可愛い子だわ」
「はい・・あ、いいえ私なんて・・そんな・・」
「友紀からいろいろ聞いてるでしょうし、私の方も聞かされてる。バロンのマスターをご存じなら私たちの関係もおわかりのはずよ。緊張なんてしなくていいの、楽しくやりましょうね」
「はい、どうしてもお会いしたくてご無理を申し上げて・・今日はありがとうございました」

 サリナは、そばにいて微笑む友紀へ横目を流して眉を上げ、それから留美をふわりと抱いた。
「あ・・」
「震えてる・・可愛い・・」
 留美は膝が抜けそうだった。くるまれるように抱かれ、仄かなパルファムが香り、いきなり性世界へ連れて来られた処女のよう・・体が反応して溶けていく感覚を自覚していた。
「私は女王、友紀は奴隷・・でも私は奴隷で友紀様は女王様・・不思議でしょ?」
「・・はい」
 わけのわからない涙が衝き上げてくる留美。二人の関係に感動し、そばにいられることに感動する。
「馬鹿ね、泣いちゃって」
 サリナの唇が寄せられて、留美はしなだれ崩れて抱かれながら唇を奪われた。おそるおそるまわした手でサリナを抱いて女王を感じ、強い酒に酔うように意識が揺らめく。
 黒いドレスの下は全裸・・背に手をまわして抱いたとき留美は女王のヌードラインを確かに感じ、忍び込む愛のような気配さえも感じていた。
「仕事のためなのかしら?」
「違います・・お会いできて嬉しいんです・・ありがとうございます」

 これがブログ『自虐のサリナ』を書くサリナさん・・書かれた文章の一字一句が思い出され、留美は体よりも心が震えた。
 そんな留美をそっと抱いて、サリナは留美をベッドへ誘い、ふわりと腰掛けて頭を抱いて引き寄せた。

「友紀、どうしたの、お脱ぎ」
「はい、女王様」
 友紀もまた心が震えた。部下の前で全裸、しかも首輪をさせられ裸身には鞭痕だらけ。息苦しく、けれども激しい濡れが襲ってきて、それさえ部下に隠せなくなる。
 留美はサリナに横抱きにされていながら、一枚を脱ぐごとに晒されていく奴隷の女体をぼーっと観ていた。
 美しく熟れた女体に生々しい鞭の傷・・紫色の首輪をし、全裸となったマゾ牝が足下に来て、膝で立って両手を頭の服従のポーズ・・それもまた夢のようで、留美は息を詰めて見つめている。

「どうかしら、私の奴隷は?」
「はい素敵です・・涙が出ちゃう・・」
 サリナは笑って、こちらもまた羞恥で眸を潤ませる友紀に言う。
「ですって友紀、嬉しいよね?」
「はい、女王様」
 サリナは言った。
「触っておやり、喜ぶから。こうしてやるのよ」
 サリナの両手の白く細い指が奴隷の乳房の先でしこり勃つ乳首をつかまえて、そろそろとコネてやり、友紀は乱れる息をこらえるように胸をふくらませて息を継ぎ、眸がとろんと溶けていく。
「あ・・ぁぁ、はぁぁっ・・」
「気持ちいいわね?」
「はい感じます、ありがとうございます・・あぁぁ・・」
 サリナは横からもたれかかる留美の顔を覗き込んで妖艶に微笑んだ。
「ほらね、いい奴隷でしょ友紀って」
 留美は声にならなくて、ただちょっとうなずくだけ。女王の片手が密生するデルタの毛むらの中へと忍び、牝の渓谷をこするように這い降りて深部へ届く。
「あぁン、女王様女王様・・あぁン!」
「ほら・・よくてよくてべちょべちょよ、ふふふ」
 少し嬲って抜いた指先を留美に見せつけ、サリナは笑う。

「さて留美ちゃん」
「・・はい?」
「立って友紀に脱がされて・・それとも自分で裸になれる?」
「はい・・ハァァ・・んっ・・ハァァ!」
 詰めた息の苦しさの反動で吐息が喘ぎに変わっていく。
 ふふふと密かな息笑いをしたサリナは、留美の脇に手を入れて留美と一緒に立ち上がり、ふたたび両肩に手を置いて眸を見つめた。
 涙に濡れる留美の眸がチラチラと揺れ、荒かった息が静まっていく。
「いいわ脱がせてあげましょう」
 女王の手が上着にかかり、スカートにかかり、濃い紺色のパンストだけは自分で巻き脱ぎ、留美はピンクのランジェリー。女王がブラをはずしてやると細身にしては豊かなCサイズの肉房がこぼれ落ち、真っ白な女体に最後に残ったパンティを女王が下げて、そのまましゃがみ、布地につぶされていた毛むらの底へと鼻先を寄せていき、渓谷の上にチュッと触れるキスをする。

 留美は崩れた。力が入らず膝から崩れ、全裸の肢体を女王が抱いてベッドへ崩して横たえる。
「友紀、やさしくしてあげなさい」
「はい、女王様」
 友紀は微笑みながらベッドに片膝をつくと裸身をまたいでベッドへ上がり、留美の裸身に奴隷の裸身を重ねていった。

「あぁぁ友紀さん・・ぅぅぅ泣いちゃう・・嬉しいです私・・」
「ふふふ、留美ちゃんこそ素敵です、綺麗よとっても」
 そしてそのときベッドの反対側から、ひときわ白く、引き締まった女王のヌードが忍び込み、留美を抱いて乳首を口にそっと含むと、手が滑って毛むらの底へと降りていく。
 そのとき友紀は、もうひとつの乳首を舐めて乳房を揉み上げ、留美の裸身を撫でまわす。
 留美のヌードがしなやかなアーチを描いて反り返り、脚が開かれ膝が立って、女王の指が花奥へと没していく。

「あぅ! ああ、ぁっぁっ・・女王様・・あぁーっ!」

 サリナに対して女王様としか言えない留美。降り注ぐ陽光に滲むような意識の中で、体をまたがられる感触に眸を開けると、陰毛のない綺麗な性器が迫ってきている。肉の薄い花リップは咲いてひろがり、綺麗なピンクの膣口が覗いている。濡れが流れ出して蜜玉となり、煌めいていたのだった。
 女王としか表現できない・・留美は、サリナにも友紀にもとてもおよばない女の深さを感じていた。
 女王の舌が入ってくる・・留美はたまらない気持ちになれてサリナの性花に舌を這わせていくのだった。
 そしてそんな女王のアナルを友紀は舐め、そうしながら留美の乳房を揉みしだく。
「ぅふ・・留美、友紀、夢のようよ・・気持ちいい・・」
「はい」と応じる二人の女声が重なった。
 そしてそのとき、留美の手が友紀の奥底へと忍んでいって、濡れそぼる奴隷の性器をまさぐった。
 ニュアンスの違う三人の女声が隠微なハーモニーとなって漂って、白い牝が絡み合い、声量を上げていき、重なり合って崩れていく。

 ゲストの留美を中に、左にサリナ、右に友紀が寄り添って、静かな余韻の中にいた。言葉はなかった。二人で留美の裸身を撫で合って、女三人が寄り添っている。

「女王様、これを」
「あら、お手紙?」
 鮮やかな赤い蝶の舞う白い封筒。数日して留美に手渡されたものだった。封はされておらず友紀はすでに読んでいた。
 今日の友紀は首輪をされて、けれどもベッドを許されサリナの腕に抱かれていた。

 サリナさん、友紀さん、大切なお二人へ。

 M女でないことが口惜しいほどの素敵な夜をありがとうございます。
 甘い夢は覚めてくれず、お二人のことを思うだけで体が熱く、指を
 忍ばせ心の濡れを確かめて、これまでのように卑屈にならず自分
 を慰め果てていける。それがとっても嬉しいの。

 私の性に私自身が責任を持って堂々と性器を開いていく。私の
 中にずっとあった不倫願望の正体を見た気がしました。
 私は私の性を自分で決めたいと思っている。自分を高みに置き
 たがるポーズの末の結婚では嫌だということ。結婚なんてそんな
 ものだと思っていたから、いつかきっと私が決めた性の中へと浸
 っていきたい。隠しておけない淫女の私となって悶えたい。
 そんな想いだったのだと気づかされた夜でした。

 女王で奴隷のサリナさん、奴隷で女王の友紀さん、よくわからな
 かったお二人の愛の姿もくっきり見た気がします。どちらにして
 も命がけで相手を想う女心。また、心から自分を想う者同士の愛
 のカタチと言えばいいのでしょうか。
 あの夜ご一緒できたことが私の何かを壊してくれた。どちらでも
 ないと思ったことも私はMかもと思えるようになっている。女性に
 抱かれ女性を抱くことにも胸を張っていられそう。それも嬉しい。

 それでねサリナさん、『もう一人の私』って言うじゃないですか。
 私にとってのもう一人の私は女王様。そして私は奴隷ですから、
 自分で自分を貸し出すようなことをやってみたいと思っています。
 ほどよい自虐と言えばいいのかな。
 もう一人の私が私に言います。サリナさん、そして友紀さんがお
 相手なら、いつだって貸し出すからねって。

 アイラブユーをお二人に。愛しています。留美でした。

 サリナは微笑んでレターを折って封筒へ戻していく。
「借りたくなったらどうすればいんだろ?」
「ふふふ、言っておきます私から。きっと喜ぶと思いますよ」
 サリナは腕の中の友紀を見つめて言うのだった。
「友紀の力ね。ユウだって治ちゃんだって、ケイもそうだし次には留美。だいたい私がそうだから」
 友紀はサリナの胸にすがった。
「女王様」
「なあに?」
「主人が二週間で戻ってきます」
「そうね、早いものね、あっという間」
 サリナは友紀を見つめて言った。
「だから何?」
「そうなれば私は女王様。鞭傷を嫌がり陰毛をなくせない奴隷ではいつかきっと破綻する。女王様の想いに応えてあげられない。サリナと離れるなんて嫌。だから二度と手放さないよう私が君臨してサリナを牛耳る。貸し出して留美にも抱かせてやるし相手が男だってかまわない。性奴隷に堕としてやる。死ぬまでそばに置いて泣かせてやるんだから・・愛してるのよサリナ・・大好き・・」
 言いながらどんどん友紀は泣いていく。
 見つめるサリナの眸にも涙が浮かび、サリナは奴隷を抱き締めた。

「・・『自虐のサリナ』・・」
「yuuが見つけた」
 そばでyuuが涙ぐんでうなずいている。

 バロンから小走りに自宅へ戻ってパソコンを立ち上げた。ブログはすぐに見つけられ、友紀は息を詰めて食い入った。
 数日後には夫が戻るという夜のこと。今日からサリナは数日出張で大阪にいる。戻ったときにはサリナは奴隷。そんな想いを抱えてバロンを覗いた友紀だった。
 記事は何ページにもわたっていて、最初の一ページに眸を通し、末尾まで飛ばして書きはじめられた最初から読んでいく。
「凄い・・こんなこと書いてたなんて・・サリナ・・愛してる・・」
 涙があふれた。友紀は震えた。読み進み、ふたたびトップページに戻ってくる。

 これほどの幸せはございません、女王様。
 ハンパなMでは破綻するとおっしゃられ、
 君臨すると宣言された。
 サリナは怖くて震えています。
 嬉しくて嬉しくて震えています。
 どうぞ鞭を。体にピアスを。
 手加減ないお心をサリナに向けてくださいますよう。
 サリナは悲鳴をしぼって女王様にお仕えします。
 嬉しい・・嬉しい・・泣いてしまってもう書けない。

 声を上げて友紀は泣いた。泣きながら電話を取って奴隷を呼び出す。
「サリナ・・ぅっぅっサリナ・・」
「友紀・・女王様? どうなさったんですか?」
「読んだわよ『自虐のサリナ』・・yuuちゃんが見つけて教えてくれた」
「はい・・隠していてすみませんでした。いつかきっとと思ってて」
「もらったからね・・サリナの気持ちはもらったからね! 早く戻って、早く」
「ありがとうございます、三日ほどで戻れますから」
 双方で泣いた電話を切った直後のこと、なぜかうるさく響く電話が入った。

「あら留美ちゃん? どうしたのよ?」
『たったいま三浦さんから電話があって、友紀さんにかけたら話し中だったって私のところへ』
「うん、それで? ・・ぇ・・ユウが・・」
『カーブで対向車線にはみだしてきたトラックと正面衝突らしくって・・モモさんは重体で・・ユウは・・』
 泣き崩れる留美だった。

 ユウが消えた・・即死だそうだ。

 赤ちゃんがいたのに・・目立ちだしたおなかを撫でて笑っていたのに。 友紀は声もなく肩を落とした・・。

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