2017年01月16日

DINKS~フリーランサー(十八話)


十八話


 バロンのマスター・・あの細川なら、サリナをどう躾けていくのだろう・・。

 日曜の朝早く、湘南あたりへ向かうクルマをサリナに運転させながら友紀はそんなことを考え続けた。
 友紀のクルマ。都心に近い笹塚から横浜に近い菊名へ向かい、サリナを拾ってからはサリナに運転させている。ルートを合理的に考えるとそっち向きになってしまうのだったが、行き先はどこでもよかったし、少しでも長く二人の時間をつくるためにも遠出しようとは思わなかった。
 大阪のホテルで逢って以来の二人きりの外泊。友紀は気楽なジーンズスタイル。サリナは女王との関係を誇るように黒い革のミニスカート。化粧もきっちり整えていたし、一見すると立場は逆か。洗練された上位のサリナに下位の友紀が連れられているように思われてもしかたがなかった。

 しかし・・そんなサリナの姿を一目見て、だからこそ友紀は、あのマスターならサリナをどう調教するのだろうと考えてしまうのだった。
 細川という男、SMカップルの取材ではじめて会ったときからSMをほとんど語らない。愛奴だったyuuの口から聞き出したのを覚えていたし、そのときそばにいて、穏やかに語るyuuをうかがっていた細川の姿に、奴隷への深い想いを感じたものだ。だたそのときは友紀にとってはあくまで仕事。SMなんてもちろん縁のない世界だったし、視点はM女のyuuであってS男性の細川ではなかったこともある。女性誌の読者は同性の想いに惹かれるものだから。

 そんな中で、あのときふと細川の言った言葉が思い出される。
『SはMを創る。MはSを創る。互いに媚びない』 
 というものだったが、いまになって言葉の意味がわかる気がする。

 サリナという女は普通に逢えばレズ関係としての恋人の目線のようにも思えるのだが、女王様と口に出したとたん切り替わるように乱れるし、奴隷になりたがる素振りを見せる。
 『友紀様』と呼ばせても嬉しくなさそう。M女性への憧れがそうさせるのか、マゾ牝はこうあるべきといった偶像を追いかけるのか、ときどきそれが『媚び』として映るのだった。
 そしてそのM女の媚びに私はS女の媚びで応えていないか・・何かが違う、このままではいけない。幾度同じことを考えてもまたそこへ戻ってしまうし、似たような答えに行き着くだけ。
『思うままに責めておやり。奴隷は女王などよりはるかに強い生き物ですから大丈夫。根が浅いと地上が倒れ、根だって死んでしまうもの』
 瀬戸の言葉がすべてだった。根は茎や葉や花に媚びて伸びるわけではないだろう。

 細川はyuuをどう躾けているのだろう・・めぐりめぐって思考がそこへいったとき、友紀の視線は運転席へと流れていた。
 サリナの横顔がじつにいい。キラキラしている。心から女してると思ったときに、ふいに言葉が口をつく。
「楽しそうね?」
「ンふふ・・はい」
 もういいや、楽しもう。考えすぎるのが悪い癖・・それはつまり、いい原稿を書こうとする想いのあまり・・と、友紀は面倒な思考を振り切った。

 大磯あたりのラブホテル。最上階の五階。少し遠くに青い海原のひろがる見事な眺めだったのだが、西の空のあるところから向こうが黒い雲に覆われてしまっている。
 窓際に二人で立って友紀が言った。
「・・雨になりそう」
「そうですね」
 友紀はハァとため息をついて切り替えた。
「いいわ、覚悟を決めて脱ぎなさい」
 真顔でサリナの眸を見つめ、サリナも真顔で眸を見つめ、女が二人、一瞬の冷えた緊張の後、SとMに分かれていった。

 ラブホテルの部屋はゆったり広く、大きなベッドとラブソファが並べて置かれ、そのそばにはテーブルセットも置かれてあって、友紀はライムグリーンの合皮でつくられた低くソフトなソファに座り、明るい陽射しの射し込みはじめた窓際に着衣のサリナを立たせておいて、踊るように脱ぐよう命じた。
 透けるブルーのブラウスが同系色の青のブラを映している。サリナはスローテンポでしなしなと肢体をくねらせブラウスを脱ぎ、ブラをはずす。真っ白な円錐の二つの乳房が解放されて、色素の薄い乳輪が性感の高まりを顕すようにすぼみ、ほどよいサイズの乳首を勃たせて、すでに乳房に鳥肌が立っている。
 黒革のミニスカートはヒップの張りに引っかかり、踊り子は尻を振って滑らせて腿まで降ろし、脚線をのばしたままプロダンサーの柔らかな体が上半身をナイフのように二つに折って足先から抜いていく。
 濃い紺のストッキング。尻から剥いて丸めていき、同じように体を折って足先から抜き去った。
 ブラと揃いの青いパンティ。思ったとおりTバックで、サリナはそれもアラビアンナイトの踊り子のように腰を左右に振りながら脱いでいく。

 すがすがしい全裸。サリナの裸身には鞭痕などはもちろんなくて、デルタの毛も綺麗に処理され、いまにも淫らに叫びそうな性の縦口を露わにする。
「踊りながら回りなさい」
「はい、女王様・・ああ恥ずかしい・・」
 くねくね・・しなしな・・白い尻桃の蠢きがこちらを向いたとき、あのときの鞭痕が綺麗に消えて、生まれたままの女の尻が妙に艶めかしく感じられた。ゆっくり一周、こちらを向くサリナの眸が濡れたように輝いている。
 足下に呼び寄せて、膝で立って脚を開き手は頭の奴隷のポーズ。真っ先に紫色の犬の首輪をさせてやり、両手首に巻き革の革帯がチェーンでつながる手錠をさせて、膝で立って後ろ手のサリナの顔を覗き込む。

 サリナはいまにも乱れる息を殺していて、小鼻をひくひく、とろけたような眸をしていた。牝に備わる淫色をそのまま視線にしたようだった。
 両方の乳首に手をのばし、けれども今日は最初から力を込めて乳首を引き出し勃たせるようにコネあげる。そのときサリナはこらえきれずに甘い声を漏らしだし、うっとり眸を閉じ、素直に乳房を突き出した。
「ほうら気持ちいい。でも今日からは違うのよ。奴隷として私のオンナとして生きていく何もかもを教えていく。甘えてもダメ媚びてもダメ。ただ一心に女王に仕える性奴隷。覚悟はいいわねなんて訊くこともやめようと思ってる」
「はい、女王様、心からお仕えいたします」

 友紀は真顔でちょっとうなずくと、洗濯バサミではない乳首責め用のステンのクリップを手にすると、浅い牙のある鰐口をキリキリ軋ませ開いてやって、右の乳首、左の乳首と、無造作に責めていく。
「ぅぐ・・ハッハッ、ハァァ・・うぐぐ」
 サリナの眸が激痛に見開かれ、左右の乳首を交互に見ている。
「ほうら痛い、泣いてもいいから耐えなさい」
「はい・・うむむ・・痛いです」
「立って踊る。がに股に脚を開いてマゾらしく乳首を振り回して踊ってごらん」
「はい・・ああ痛い、乳首が壊れそう・・」
 手錠で両手を腰の後ろに取られていてもプロダンサーの動きは滑らかで、弾みをつけなくてもすっと立つ。腰を大きく落としてがに股に脚を開き、乳房を振って重みのあるステンの乳首クリップを振り回し、サリナは痛みに口吻をまくりあげて歯を見せて、荒い吐息を吐きながら尻を振る。

「ジュースが垂れるまでよ」
「はい、んんーっ、んっんっ・・」
「痛いの? 感じるの?」
「感じます女王様、嬉しいです女王様」
「じゃあもっと激しくなさい。クリップなんて飛ばしていいから」
「はい、ああ痛い・・いいえ気持ちいい・・ああ女王様、あぁーっ!」

 それでもまだまだ動きが遅い。友紀は真新しい黒革の乗馬鞭を手にするとシートを離れ、横に立って奴隷の白い尻をパシンと軽く叩いてやる。
「もっとでしょ。ちゃんとしないとお尻が青痣になるからね」
「はい。むむーっ、うぐぐ!」
 歯を噛み締め唇を固く結んで乳首を振り回すサリナ。見る間に体中に汗が浮き、全身が桜色。閉じている陰唇がヌラめきだして興奮を物語る。「鞭が嫌ならちゃんとなさい」
「はい踊ります・・いいえ鞭も・・ああ女王様、濡れてきました」
 友紀はほくそ笑み、毛のないデルタの谷底へと指をのばした。ヌルと抵抗なく膣に収まる女王の指。
「はぁう! あぅ!」
「ほんとヌラヌラ・・ふふふ、そうして頑張って可愛がられる奴隷になっていく。それが歓びなんでしょう?」
「はい嬉しいです女王様・・ああ乳首が・・」

「泣いてもいいけど泣いてもダメ」
 サリナは深くうなずくと、今度こそクリップがはずれて飛ぶほど乳房を振った。呻く、喘ぐ、悲鳴・・やがて泣き声へ。
「いいわストップ」
 友紀はシートを立って、がに股に立たせたまま、乳首の責めを許してやった。クリップははずそうとしても痛い。サリナは顔を背けて涙を流し、唇を固く締め、しかしそのとき、痛みに腹圧が上がったからか開かれた腿の間からツーっと透き通った愛液が糸を引く。
「ほら垂れた、見てごらん」
 サリナは泣き顔を真下に向けてフロアを見る。フロアはクッションフロアで焦げ茶のフローリング。そうやって真下を見る間にも愛液は次々にあふれ出しては糸を引く。糸が切れずに床まで垂れる。
 友紀はがに股立ちのサリナの頭を押さえつけてフロアにつぶし、髪の毛をつかみ、垂らして蜜玉をつくる愛液を鼻先に見せつけた。
「自分で汚したものよ、舐めなさい」
「はい、女王様」

 そしてそのまま額をフロアに押しつけて尻を上げさせ、サリナの裸身を三脚這いにしておいて、開かれた尻の底へと乗馬鞭の先を寄せていき、ヌラヌラの性器をそろりと撫でた。
「あぁン女王様」
「甘えてもダメよ」
「はいぃ」
 ピシャピシャと二度嬲り、軽く手首を返してやって濡れそぼるラビアを一打。ベシッっと湿った音がした。
「きゃぅ!」
 サリナは前へ、水泳のスタートのように裸身を投げ出し吹っ飛んで、尻をひくひく、足先をバタバタさせてもがいていた。
「ほんの軽い鞭ですからね。お仕置きならこうはいかない」
「はい、女王様」
 軽くても痛いだろうし、性器打ちなど思ってもいなかったはず。サリナはよく締まる尻をこれでもかと引き締めてもがいている。

「顔を上げて私を見なさい」
「はい」
 裸身をひねって顔を向けるサリナ。先ほどまでの溶けただけの眸ではない、涙に濡れるマゾ牝の眸をしている。
 つくづくいい眸をすると友紀は感じた。
「もう一度言うわよ、媚びてはダメ。ただ一心に私を見つめマゾの自分を楽しむこと。サリナが楽しくないと私だって嬉しくないでしょ。そこをよく考えて、だけど何も考えない。わかったわね?」
 サリナはうなずいてから「はい」とはっきり応えていた。
「わかったら、そこに正座です」
 サリナの鍛えられた裸身がくにゃりと蠢き、両手を後ろに正座する。
 友紀はそんなサリナに自分の匂いを嗅がせるように、そばに立って脱いでいく。ジーンズにTシャツ。それだけで友紀は黒の上下の半裸となれる。

 その姿でソファに座り、足下にサリナを正座させ、ブラをはずし、自分で尻を浮かせてパンティを脱ぎ去って、友紀もまた濡らしていたパンティを裏返し、裏地の蜜を口許へと突きつけて舐めさせる。
 サリナは眸を閉じ、チロチロ舌を出して舐めていたが、その面色には明らかに微笑みが浮かんでいた。
「幸せです女王様」
「そうね、私も楽しい。ちゃんと舐めたらご褒美に私を舐めて。足の先からアナルまでくまなくよ」
 はいと応え微笑んではいても、甘ったるい声は出さない。今日が奴隷への一歩だと見定めたM女の潤いに満ちた貌(かお)。

 こうして一歩ずつ私たちのSMは深まっていく・・。
 このとき友紀はSMへの想いはサリナに書かせ、私は行為を書いてみようと思い直していたのだった。あのプロットに足りないものは行為。心なんて、どう書こうがありきたりで届かない。女同士のリアルなSMをそのまま書いて、そこに奴隷の感傷を織り込めばいいと考えていた。

 女王は溶けていく・・サリナの奉仕が全身に行き渡り、女陰の蜜が舐め取られ、最後に肛門までも舐められて、女王は甘く溶けていく。

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