石油ストーブ

燃えはじめるときの灯油の匂いが好きだ。
ボッボッボッとなんだか必死にもがいている。

そこへいくと、エアコンはスマートだね。
燃えるなんていまどきダサイと言うように、
スイッチオンで吐息みたいな風をくれる。

ガスストーブは怒る。コイツも燃えるタイプだし。
「ダサイとは何よ! パワーで勝負!」
ところがコイツにも難点はあり、つねに紐付き
であることだ。ホース。下手に付き合うと、
よじれて曲がって後々面倒なことになりそうだ。

エアコンはすまして言う。
「ガスが何よ、地球の屁で燃えてるくせに」
うん、なるほどと思わず言うとガス子が泣く。
しまった。そこで俺はガス子の味方。
「電気だってそーじゃねえか、火力発電」
「あら失礼な、太陽光だってありますし」
「なもん雨降りゃおしまいだろうが」
今度はエアコン怒りだす。焦ってスイッチ
間違えりゃ冬なのに即座に冷房。心も凍る。

さて、石油ストーブめ・・ボッボッボッ。
「ええい、早よせんかい! さっさと燃えろ!」
「嫌ぁぁン、女は急に燃えません」
いよいよ燃えはじめると、その炎は情熱的に
赤く、冷えたヤカンを一気にチュンチュン。

しかしである。そのうち小窓が赤くなってガス欠。
「だああ、めんどくせぇ!」 
で、いっぺん消すと、またしてもボッボッボッ・・。
「早よ消えろーっ!」
「ンふ・・燃えた女は冷えないものよ」

うん、確かに。
燃えないわ冷えないわ、だから女はめんどくさい。

で怒り狂ってポンプぽこぽこ給油するんだが、
そんとき灯油をこぼそうものなら、男は奴隷の
ごとく這いまわり、足を舐めるように拭いて
やらなきゃならなくなる。
「なんなら燃えてあげますよ?」
「ごめんなさい、いまダメ、火事になる」
灯油を怒らせたら恐怖はまさに女王様クラス。

いつか喫茶店をやりたいと書いてきたが、
そんとき俺は石油ストーブを選んでやりたい。
手がかかる女ほど可愛いと言うではないか・・。

うん。