2016年12月25日

潤な話題(四)


それは街だったりする。景色だったりするだろう。

そこには、あのころの俺が置いてあり、

訪ねて行くならコートの襟を立てたくなる

すこしは冷えた寂寞のなかがいい。

きいたふうな聖なる夜など行きすぎて、

でも、年が古いいまのうちがいいだろう。


あのころの俺が懐かしい喫茶店に座っている。

ちょっとぐらい壁の色が変わっていようが、

おお、そうだ、あのころ確かにそこに座った。

木の痩せた古いカウンターを撫でてみる。


しかしすぐに若かった俺はいなくなり、

いまの俺しか残っていないと気づくんだ。

ちょっといいなと色目をつかったバイトの娘も

そこにはいなく、マスターさえも代わっている。

「珈琲」

あれ? あのころ俺はカッコよくブレンドと

たのんだものだ。 け。 ちょっと苦笑。


この店に来たのにはわけがある。あのころ

横にいた彼女だって、きっといるはず。

すこしはわかってやれればよかったのに・・。

泣くもんかと思いながら店を出て、そうすると、

冬の風が冷たく思えて寂しくなる。


うん。泣くもんか。

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