女の陰影

女の魔性、狂気、愛と性。時代劇から純愛まで大人のための小説書庫。

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TIMES UP
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もういい。TIMES UP=終わらせよう。
地球に死ねと男は告げた。

辞世の一文(序章)
2054年のジョゼット(一話)
デトレフ中佐(二話)
人間生活(三話)
忍び寄る影(四話)
LOWER居住区(五話)
ルッツの店(六話)
ボスの女(七話)
逃亡者(八話)
馬鹿げた真実(九話)
異星人(十話)
暴かれる生殖(十一話)
タイパンの女王(十二話)
逆転する言葉(十三話)
処断の重圧(十四話)
人間らしさ(十五話)
魂のさけび(十六話)
カウンセリング(十七話)
ムーンロード(十八話)
まばゆい月(十九話)
月という母星(二十話)
神の審判(二一話)
進化の謎(二二話)





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レズホラー その女、危険性。

一話  二話  三話  四話  五話




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1)時代劇を書いていて
2)サイトの整理




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白き剣

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~第二部
九話  十話  十一話  十二話  十三話  十四話  十五話  十六話

~第三部
十七話  十八話 
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読み切り短編  聴き耳


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進化の謎(二二話)


  ルッツが愛した小さな町は、背景となる岩山と間近に点在する岩の丘の狭間にひろがる荒野の中に家々の集まるところ。まさに開拓時代のアメリカを思わせる雄大な景色の中にある町だった。三年の間に増えた家はわずかに三軒。もともとあったルッツの店と裏のガレージ。その裏に最初の一軒が建ち、次に、そちらもまたもともとあった町外れの一軒の奥側にさらに一軒、またその横に一軒加えた全部で三軒。どれもがルッツの店を継いだ山賊たちが建てた家。
  その中でもっとも新しい一軒には、皆が集まれる大きな円卓のある広間があった。家の造りがログハウスで構造的に強いことと、ログハウスは壁が厚くて銃弾が通らないこと。平穏な町ではあったが、いつまた襲われるとも限らないし、道筋に面して町の両端に位置するルッツの店とそのログハウスとの両方で敵の侵入を防ごうということだった。

  その大きな円卓に、ティータイムを口実として、男では客人のジョエル、バートが呼ばれ、女たちからマルグリット、キャリー、コネッサ、ミーアとマリンバ、そしてボスたる留美が席につく。菓子づくりが得意なマルグリットが焼いたビスケットと珈琲紅茶、それだけが並ぶテーブルだ。時刻は遅めの昼下がり。夕食のタイミングではなかった。
  最後にバートが座って皆が揃うと留美は言った。
 「はじめてお迎えするちゃんとしたお客様と言えばいいのかしら。こちらはあのとき救ってくださった正規軍のジョエルさん。いまは大尉となられたそうですけど、ルッツさんのお兄さん、デトレフ中佐の部隊におられる方。今日から非番ということではるばる訪ねてくださったのよ」
  来客を取り次いだコネッサはともかく、皆がジョエルへ眸を流す。あのときは軍服。私服になるとイメージが一変し、三十一歳の若者でしかなかっただろう。ジョエルはとりわけ若く見え、しかし軍人らしい金髪の角刈りと鍛えられた肉体には兵士ならではの覇気が満ちる。バートも元は陸軍兵。ジョエルも長身だったがバートの体躯にはおよばない。
  ジョエルが言った。
 「一言訂正されてもらうならデトレフ大佐」
  バートがわずかに声を上げて笑う。正規軍は装備の点で勝てないというだけで丸腰ならば人対人。単身来るとはいい根性してやがるとバートは内心思っていた。HIGHLY野郎が気にくわない。

 「ということで歓迎のティータイム」
  留美は手をかざしてジョエルにカップを勧めると、自らもティーカップを取り上げた。ジョエルは珈琲。カップを手にして口に運ぶと、皆が席に揃う中で一人だけ全裸のまま留美の横の板床に控えるマリンバへと眸をやった。当然のことながらマリンバだけ飲み物などは用意されない。
  留美は言った。
 「私たちは山賊。人買いどもから女をさらい、共有される牝として犯し尽くし、そうしてずっとやってきた。それはいまも変わらない。まるで一族のようですけれど女は皆の共有物。HIGHLYのモラルなんて通用しない無法世界よ」
  留美はちょっと笑ってジョエルを見た。ジョエルはわずかに眉を上げる。あべこべに試されている。そう思うと可笑しくなって顔がほころぶジョエルだった。
  留美は言う。
 「そしていまジョエルさんも、そんな私たちの中にいる。私たちの流儀にしたがって休日を楽しんでもらおうと思ってね。マルグリットとキャリーは元はHIGHLY、ミーアはマゾ、マリンバは性奴隷、女は他にもいますから、どうぞお一人お選びくださいな。二人三人でもいいけれど。どうしようと思いのまま。ふふふ、さあジョエルさん、ご指名は?」
  バートは苦笑いしながら毛むくじゃらの顎を撫で、いまにも笑うその顔を横に向けてマリンバをチラと見た。他の女たちも皆が眸を伏せて笑っている。意地悪なボス。皆がそう思っていたに違いない。
  そしてジョエルは、そのときチラと円卓から少し離れた天井の太い梁から下がる鉄のフックへ眸をなげた。鉄のワイヤーが巻き取られるウインチになっている。ログハウスは音が通りにくいということで、つまりそういうことのための部屋でもあると察していた。調教室。

  そんな視線の動きに敏感なのはマリンバだった。責められるなら奴隷。しかしマリンバの眸はキラキラ輝いているようだ。
  バートは横目にちょっと睨む。さあ小僧、どうするつもりだ? それが内心。ほくそ笑む。
  と、そのジョエルが片眉だけを上げて言った。
 「その前に、マリンバにはお茶はないようですね。思いのまま自由にしろとボスは言う。ふふふ」
  留美は眸を細めて微笑みながらうなずいた。
 「どうぞ、ご自由に」
 「うむ。ではマリンバ、おいで」
 「はいマスター」
  一人だけ全裸で毛のないマリンバ。豊かな乳房を揺らして這ってジョエルの椅子の横に控える。ジョエルは大きなビスケットを手の中で割って口に含み、少し噛むと、合わせて珈琲を一口含んで口の中で混ぜ合わせ、マリンバの顎に手を先をやって顔を上げさせ、膝で立ったマリンバにキスするように吐き戻して与えていく。
  マリンバの眸が丸い。驚いて、そして嬉しくてならず眸が笑う。
  それからそっと一度抱いて、スキンヘッドを撫でながら座らせる。
 「ありがとうございますマスター、夢のようです」
 「よろしい、よく躾けられた奴隷だ。・・さて」
  次に顔を上げたとき、見つめるバートの視線とまともにかち合い、ジョエルはその視線にも微笑んで、それから留美の眸を見つめる。

  まさか私?

  ときめくような不思議な想いに支配された留美。ジョエルは言った。
 「でしたら望みはストリップダンスかな。ふふふ、ダンサーはボスということで。いますぐここで」
  これにはバートが声を上げて笑った。これは見物。試したはずの小僧に試されるボス。女たちも皆が双方を交互に見てひそかに笑う。
  留美はちょっと笑って、笑いが退いて真顔となって席を離れた。
  鉄のフックが巻き上げられた真下に立つ。音楽などはなかったが、バートがテーブルを軽く叩いてリズムをとる。サンバ。こういうときにはふさわしい。
  室内でもサンダルを履く文化。留美はリズムに合わせてステップを踏み、腰を振りながら肢体をしならせ脱いでいく。夏のいまミニスカートにTシャツレベル。ジーンズミニのボタンとファスナー、Tシャツ。そのとき留美は鮮やかなブルーのブラとブルーのパンティ。リズムに合わせて乳房が揺れて、ブラから解放されて尖り勃つ乳首までが露わとなる。大きくはないが形の整った綺麗な乳房。
  マリンバは見つめている。人生を奪った女の、女としての意地を見つめる。
  そしてパンティ。
  腰を振りながらセクシーに裸身をしならせて、尻から指先を滑り込ませて降ろしていく。踊る汗がにじみ出し、性的な上気を隠すように全身を桜色に染めていく。
  全裸。もはや忘れ去っていた洞穴での最初のときを思い出す。恥ずかしい。なのに濡れてたまらない。留美は熱を持つ据わった眸をジョエルただ一人に向けたまま、踊りながら黒い陰毛の奥底へ指を突っ込み、まさぐった。

 「ンふぅ、ぁぁ感じる、いい、あぁぁぁ」

  マリンバのスキンヘッドに手を置いて見つめるジョエル。まっすぐな視線。
  ジョエルは立った。立ち上がって踊る裸身に歩み寄り、抱こうとして両手をひろげたのだが、そこで留美はすとんと沈んで、ジョエルのジーンズのジッパーに手をかけた。ジッパーを開放し、手を入れて、すでに半ば勃起する若いジョエルを引きずり出して亀頭にキス。口に含む。ジョエルは仁王立ちで、足下にひざまづく留美の頭をそっと撫でてやっている。
  喉奥への突き込みが深くなって留美は吐き気をこらえて涙を溜め、それでも突き込み、ジョエルがかすかに呻いて射精へいたる。
  ンぐぅ・・飲み込む音が喉にくぐもり、吐き出した勃起に泡立つ唾液がからみついて糸を引く。自分よりはるかに小さな女の裸身を、ひょいと、あのときのバートのような腕力で立たせると、ジョエルは抱き締め、口の周りがヌラヌラ濡れる女の口に唇を重ねていく。
  バートが言った。
 「しまいだぜ、この勝負、五分と五分。ふっふっふ」
  全裸の留美と着衣のジョエル。一度キスを解いて見つめ合い、ふたたび抱き合いキスに溶ける。バートの声など聞こえていないというように。
  亮に似ている。あのときも思ったことだが、留美はジョエルのキスに亮の匂いを嗅いでいた。

  ふと気づくと、円卓はもぬけの殻。椅子の横に寄りそうように、マリンバが涙を溜めて控えていた。

  地球の青い空に半月の月が流れていた。その闇の半分にムーンアイは位置していて、そのときジョゼットだけがコントロールルームにいた。
  太陽の行き先を計算する。どれほどやってみたかわからない。しかし確率に変化はなかった。99パーセントの確率で太陽系は崩壊し、地球は引き裂かれて消滅する。ジョゼットはモニタに映し出される悪魔の星を見つめていた。やや傾いて七色のパルサーを放射する美しい姿ではあったのだが。
 「終わりね、どうしても・・」

 『いいや違う』

  ハッとした。確かに聞こえた不思議な声。それは鼓膜を通さず心に響いた天空の声のよう。
  ジョゼットはとっさに室内を見渡して、真っ先に背後のテーブルに置かれた木箱を見つめ、まさかと考え直して、窓という窓を見渡した。
  脚が震えた。大気がなく夜にはマイナス170℃、そんなところに生命は存在しない。やはり木箱か。ジョゼットは気を取り直してテーブルに歩み寄り、木箱の蓋を静かに開けた。
  デトレフがルッツの町から持ち帰ったエイリアンの化石。黒くツヤツヤ光る、まさに石の骨格だ。エイリアンは喋らず、ぴくりとも動かない。期待する私が馬鹿よ。そう思って蓋をしようとしたときだ。

 『我々が存続させる』
  ジョゼットは今度こそ慄然とした。テレパシー。それも化石となって朽ち果てたエイリアンの意思だというのか。神の声に思えてならないジョゼットだった。

 「人類は滅びないとおっしゃるのですか? お願いです応えて。私たちは必死なんです、どうか教えて」
  動かない化石を見つめてジョゼットは祈るような心持ち。
 『我々は飼育している。かつての原人。おまえたちがジャワと呼ぶ以前の猿どもを』
  進化の空白と言われるジャワ原人以前の時代。それは地球に人類らしい人類が登場した頃である。
 「ではいまから二百万年・・いいえそれ以前の地球人を?」
 『捕獲して連れ去った。知恵を授けて育てている』
 「人類が滅びても地球生命は生き残る、そういうことですね? 人類に知恵を授けたのもあなたがた? 遺伝子を操作して猿から人をつくってくれた?」
  それには声は応えなかった。
 『正しい選択を見届けて我らは去った』
 「人類を終わらせろと? それが正しい? お願い応えてください。地球はもうダメですか? 中性子星は避けられない? お願いですから、どうか応えて」

 『運命だ』

  それきり声はしなくなる。
  ジョゼットは木箱の中の小さな骨格の額にそっとキスをしてやった。
 「ありがとう」
  ジョゼットは泣いた。迷いを払う言葉をくれた。心が軽くなっていく。
  そしてそのとき海老沢がムーンアイへとやってきて、木箱に顔を突っ込むおかしなジョゼットを目撃する。
  振り向いたジョゼットは川のような涙を流して男の胸に飛び込んでいく。
  計算違いであってほしいと願う天文学者の想いが聞かせた、あるはずのない神の声。そう考えて海老沢は抱いてやるしかなかった。
  しかしこれで辻褄は合う。進化の空白としてなぜか化石の出ないジャワ原人の謎が解けた。海老沢はジョゼットが聞いた声を否定しない。
  海老沢は言う。
 「胸のつかえがおりた気分だ、楽になったよ」
 「そうね、ほんとにそうだわ。愚劣な種を解き放ってはいけない」
  二人で見つめるモニター画面にパルサーを放って輝く中性子星が映し出されたままだった。

  瞼の裏に星が舞う至上の快楽。マリンバだけが見守る中で、留美は円卓に両手をついて尻を上げ、ジョエルの強張りを子宮に感じて吼えていた。一度のピークでジョエルは萎えない。熱の勃起。下腹の奥底が焼かれるような女の夢に留美は狂い、白い尻を振り立てて吼えていた。
  ピークが来る。幾度となく追い詰められて、子宮口を洗うような射精が来る。
  ジョエルは放ったそのとき一刺し深く突き込んで、衝撃に波紋を伝える白い尻をパァンと叩くと一気に抜き去り、マリンバに命じた。
 「おまえの出番だ、よく舐めて後始末」
 「はいマスター」
  男の体と入れ替わったマリンバは、テーブルに両手をついていまにも崩れそうになる白い逆V脚の尻の底に顔をうずめ、下から手を回して腰を抱いて留美を支えた。
  白く泡立ってあさましい女の性器。マリンバはむしゃぶりついて舐めまわし、膣からとろける男の樹液を舐め取って嚥下した。
  おおぅマリンバおおぅと留美は吼え、背を反らして頭を上げて黒髪を振り乱し、そのまま力が抜けてマリンバの上にしなだれ崩れた。二つの女体がもつれあってフロアに崩れ、マリンバは留美を抱いてやって豊かな乳房にボスの顔を受け止めた。

  ドウンドウン。マリンバの心音は驚くほど強かった。遠くなって消えかけた意識がその心音で引き戻されて眸を開ける。女二人で見つめ合い、それからほぼ同時にジョエルという猛々しい牡を見上げる。
 「最高の休日だ、負けたよ留美、マリンバにも」
 「今日はどうされるおつもり? 一緒にいられる?」
  立とうとして腰が抜けて崩れる留美をジョエルは受け止め、床から抜くように立たせると、笑って言った。
 「できるなら」
 「泊まれる?」
  ジョエルはうなずき、留美が思ってもみなかったことを言う。
 「最後の楽園、そんな気がする」

 「最後の楽園は月にある。せめてもの救いは月の女神といられることだ」
  早苗の部屋。跳ね上げ式のベッドを上げて、できた空間に二脚の椅子を置いてテーブル越しに見つめ合う。二人揃ってたったいま部屋に入ったばかり。デトレフは座るなりそんなことを言い出した。
  早苗は笑う。
 「どうしたのよ詩人みたい? 地球へ行っておかしくなった? ふふふ」
 「地獄を見たさ」
 「遺体でしょ?」
 「南極に打ち捨てられた累々たる凍った死体を百体単位でプレスして積みやすいキューブを造り、積み込んでいく。写真を見せられて寒気がしたよ。こんな星は終わればいいとは思うのだが俺は神ではないのでね」
  早苗は浅くうなずいて、そのときちょうど弱いノック。ターニャであった。
  ビアンでマゾ。ターニャもまた心の闇に苦しむ一人の女。
  デトレフは笑わず見据えた。早苗がターニャとそういう関係であることは知っていても、こうして密室に顔を揃えたのははじめてだった。
  ターニャは性の予感に心が震える。戸口を入ったまではよかったものの、立ち竦んで声も出せない。
 「男の人がダメみたいよ。ビアンでマゾ。でも可愛い女の子」
  言いながら早苗は立って跳ね上げ式のベッドを倒しターニャ一人を座らせた。

  早苗は言った。
 「女王様を抱ける男性はマゾにとってどういう人?」
  ターニャは白い頬を赤くしてうつむいたまま、消えそうな声で言う。
 「ご主人様です」
  早苗はちょっと微笑んだ。
 「かどうかはともかくも、責めたくなって私は呼んだ。脱ぎなさい」
  ターニャは怯えに揺れる眸を早苗に向けて唇を噛んでベッドを立った。
  シルバーメタリックのスペーススーツの下は皆が同じ。ピンクの紙でこしらえたブラとパンティ。脱ぎ去った白い裸身の乳房を抱くようにしてターニャはふるふる震えている。ブロンドのショートヘヤーが男っぽくて逆に美しく化粧などしなくてもターニャは美人。金色の陰毛では隠しきれない裂溝が毛の中に透けている。
  デトレフは微笑みをたたえて見つめているだけ。女王は早苗なのだから。
 「ベッドに座って足を上げ、奴隷の欲情をお見せしなさい」
 「・・」
 「ターニャ!」
 「はいっ女王様」
  デトレフにとって、ターニャの体の底よりも、S女となって命じる早苗に心が揺れる。女が生まれ持つ情欲の魔女の横顔を見せつけられた気がしていた。

  留美の部屋の大きなベッドでジョエルと留美は溶け合って、そのまま静かな夜は訪れた。逞しい胸に頬を寄せて漲る心音を聞きながら、穏やかに眠った男の根源をそっと握る。
 「こうした暮らしを末端などと言うつもりもないが月は間違いなく最先端だ」
 「末端だわよ。そうなるよう仕組まれた末端ですけどね」
 「その両極で同じことが起きていると思ってね」
 「どういうこと?」
 「月にいる一割が女性。月では女たちのほとんどが避妊薬を口にし、性の自由を楽しんでいるそうだ。それを言い出したのは日本人の女医らしい。多くの男たちが疲弊している。男たちが苛立ってきて、このままではいつか壊れる。私は男たちを抱いてやりたいと言ったそうなんだ」
 「母性よね」
 「それもそうだが内なる声に素直なのさ。男は子供、女は母。この図式は本能的なものなのだろう。マリンバがそうだ。子供たちの暴虐に母は身を捧げて耐えている。タイパンへの恨みなどもはやあるまい。哀れで可愛い性奴隷。子供たちは自らの愚行に気づいていて母に対してすまないと思っている。マリンバや、もちろんルミも、女たちのすべてが野獣をつなぐ力となる」
 「それで月はやさしくなった?」
 「一割の女たちだけがHIGHLYさ」
 「なるほどね、わかる気がする」
  ピロートーク。
  あれからも責められ抜かれ、ベッドの脚にチェーンでつながれ疲れ切って眠るマリンバには聞こえない。

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神の審判(二一話)


  五百万人の人々が生存できる月面都市とは、すなわち壮大な地下街を造ろうとするに等しかった。月の外殻を天井とする二重構造なのだが、構造的には地下街というよりも潜水艦の内部を思えばよかっただろう。居住部分を大空間としてしまうと事故や隕石の衝突などで一部がやられてしまうだけで全滅しかねない。そこで小さな空間をいくつもつないで気密ハッチで分断できる構造とするわけだ。
  大を救うために小を殺す。それは正しい判断なのかも知れなかった。
  しかしその発想が、地球上でHIGHLY、WORKER、LOWERという区画を生んで、HIGHLYだけが人という極端な正義が生まれてしまった。地球に終焉のときが訪れるのは避けられない。宇宙スケールのノアの箱船。なりふり構わず生きようとする本能が暴挙の本質となっている。
  太陽系の行き先に死をもたらす中性子星が待ち構えているなどとは、人々には一切知らされていなかった。あくまでオゾン層の減衰と海面上昇という地球環境の激変に対する対策であるはずが、行き過ぎもはなはだしい。HIGHLYの暴挙に対抗するレジスタンスが生まれると殲滅される。それはHIGHLY同士であっても同じこと。天文学者が真実を伝えようとすれば抹殺され、人道主義者が異議を唱えれば粛清される。
  人類は史上かつてない暴力の時代に生きていた。

 「着陸まで一時間です」
 「うむ。戻って来たな」
  光の三日月だった月が大地としてひろがって、懐かしくも思える景色となって目に映る。デトレフは苦しかった。軍船には核兵器の起爆部分が大量に積まれていて、地球の終焉を決定的なものにする。
  終焉までおよそ七十年。ムーシップの旅立ちまでなら五十年。そのどちらもが自分の人生には無関係。しかしその頃になって生まれる命もあれば若者たちも大勢いる。愚かな人類を宇宙へ解き放ってはいけない。そうは思っても、絶滅は神の審判に委ねるべきではないか。俺は神ではない。眼前に迫ってくる月面を見渡して、デトレフは自分がわからなくなっていた。

 「ふぅぅ、ルミか・・」
  つぶやくデトレフ。
 「はい?」
  部下が問う。
 「いやいや独り言さ、気にするな」
  ルッツよ、おまえならどうする?
  ルミというあの娘にも無関係なことなのだが、その子孫、そのまた子孫を処刑することになる。月面にいる者たちにも次々に若者が送られて来るだろう。人類のためと信じて人生を捧げた者たちを裏切ることになりはしないか。

 「戻って来たわね」
  月面望遠鏡ムーンアイのコントロールルーム。黒い空に浮かぶ軍船を見上げてジョゼットは言ったのだったが、そばにいて海老沢に声はない。
  地球の周回軌道に浮く宇宙ステーションから、すでに核兵器廃棄のための超大型輸送船は旅立っている。
  ジョゼットが言う。
 「二十五年後か。ふふふ、私たちはお婆ちゃんとお爺ちゃん」
  灰色の船底を見せつけて迫り来る軍船を見上げながら苦笑するジョゼットの背を海老沢はそっと撫でてやる。
  デトレフ帰還。月を出てから十か月が過ぎようとしていた。
  いまから正確に二十五年後。宇宙ステーションから送り出された核兵器の廃棄船は、旅立って十年で動力部分が故障。その後宇宙を彷徨ってふたたび月へと戻って来る。そうなるようにプログラミングされていた。

  ムーンカフェ。

  軍船の帰還は予定した時刻よりも大幅に遅れ、ムーンカフェのクローズタイムを過ぎていた。カフェを閉じ、それでも二人は眠れなく、ムーンアイへとやってきた。そのとき月面都市は三日月の夜の側に入っていて、望遠鏡ははるか天空のベテルギウスを捉えている。こちらも死を目前にした巨星。海老沢とジョゼットだけの静かな空間。軍船が戻ったのはそんなとき。
  ジョゼットは、待ちわびる早苗にインターフォンを入れておき、海老沢と二人でふたたびムーンカフェに戻っていた。珈琲を支度する。
  ほどなくして、毅然とふるまう凜々しい軍人が入って来る。八か月ぶりに見るデトレフは、瞳の奥に強い意志の漲る男。少しも変わっていないと二人は思い、さらにそのときドアが開いて早苗が笑う。
 「やっほ」
 「ふふふ、うむ、元気そうだな」
 「元気だもん」
  ふざけて言って、早苗は涙を浮かべてデトレフの胸に飛び込んでいく。四人ともにシルバーメタリックのスペーススーツ。ジョゼットをカウンターの中に置いて三人並んで席につく。
 「降りてみたさ」
 「行って来たんでしょ弟さんのところ?」
  早苗が言ってデトレフはちょっと笑った。
 「体がこんなにも重いものとは思わなかった。動けるようになるまで十日ほどかかったものだ。月はやさしい、まさにルナ、女神様だよ、体が軽い」
  柄にもないことを言う。早苗はちょっと肘で小突く素振りをする。

  ジョゼットの珈琲。カップを口に運びながらデトレフは言った。
 「最悪だ」
  独り言のようにボソっと言う姿を三人揃って見つめている。
 「アフリカエリア、それにアジアエリアでも、またしても反乱があって百万人単位で殺されたそうなんだ。オーストラリア大陸は比較的平穏だったが、HIGHLYどもの締め付けはますます厳しくなるだろう」
  早苗は言う。
 「鬼畜の所業ね」
  デトレフは声もなくうなずいて、そして言った。
 「核廃棄は予定通り。起爆装置もくすねてきたさ」
  女医としてなのか早苗は問うた。
 「遺体のほうは?」
  死体とは言わない。
 「直接タッチはしてないが・・」
  そのときのデトレフの面色の曇り。それきり誰もその話題に触れようとはしなかった。
  早苗は言う。
 「ごめん、余計なこと訊いちゃった」
 「いや、かまわん。俺は軍人たる自分を呪うよ。嘔吐が出る連中の側にいると思うだけでやりきれん。しかしな、それはそうでも・・」
  それきり絶句したデトレフを察してジョゼットは言った。
 「私たちもそうなのよ。私たちは神にはなれない」
  デトレフは声を返さず眉を上げ、思いを切り替えるように顔を上げた。
 「正論を言うならそれでいい。時間はまだある。ところで」

  そうデトレフは言って横に座る海老沢へと目をやった。あのことはもちろん無線で告げてある。地球で傍受されても解読できない暗号化された軍用無線。
  海老沢が言った。
 「かなりな揺れから想像するに、彼らは地下都市を爆破して去って行った。新しいクレーターができたというだけのものだろう。行ってみたくても手段がないのでね」
  次にデトレフは早苗に向かった。
 「あ、そうそう、弟の町で出た化石を持って来た。ほぼ完全な骨格だ」
  早苗が言った。
 「姿は同じ?」
 「そのままさ。幼子のようでもあって哀れに思えてならなかったね。もはや石。医師の領域ではないだろう」
  早苗は、すっと背伸びを一度して語調を変えた。
 「はいはい、もういい、今夜はおしまい。さあ坊や、いらっしゃい。医師としてのボディチェックです」
 「ちぇっ」
  これには皆が笑い合う。自室へ呼んで甘えたい。早苗らしい言い方だった。

 「マリンバ、散歩よ、いらっしゃい」
 「はいボス、ありがとうございます」
  牝豚のことを最初にマリンバと呼んだのは、他ならぬバートであった。責められて歌うような悲鳴を上げ、打ちどころで音階が変化する。打楽器のようだというわけだ。マリンバの奏でる悲鳴は果てていく甘い吐息に変化して曲が終わる。
  留美は三十歳となっていた。ルッツの町は平穏そのもの。レジスタンスの台頭を警戒して軍じきじきに視察に来ても、ルッツの町はあまりに小さく、住民たちもほとんどが中年以降。野蛮きわまりない山賊の棲み家であり、よそからの目立った出入りもないということで黙認されていたからだし、そのときもマリンバの存在が決定的な蛮族のイメージを植え付けた。性奴隷を虐待する連中としか映らなかったに違いない。
  季節は初夏。留美は白いミニスカートにプリントTシャツの姿で、とても山賊のボスとは思えなかった。しかしステンレスの首輪につながるチェーンを手にし、ミニスカートほどの腰布を与えただけで白い乳房を弾ませて歩く髪の毛のない奴隷の姿を見るにつけ、彼らは山賊だったと思い知る。そうした姿を軍にも見せつけ、したがってルッツの町は平穏を保てている。

  三年の間に住人の二人ほどが召されて逝って、町の者たちも好ましく老いてくる。若くても四十代という人々にとって、タイパンのクイーンと呼ばれた女への憎しみは失せていた。
 「よおマリンバ、相変わらず綺麗だぜ」
 「ほんとよ、髪の毛だって許してやりたいぐらいだね」
 「はい、ありがとうございますマスター、それにマダム。可愛がっていただいておりますので」
  そうして逐一道ばたに膝を着いて挨拶させる。男はすべてマスターと呼ばせ女であればマダム。もしもそのとき欲情されれば誰の体にも奉仕する。それが性奴隷マリンバの存在だった。
  半裸の奴隷を足下に控えさせ、留美もまた明るく応じる。
 「そうなんですよ、そろそろいいかと思ってて」
 「髪の毛を?」
 「ええ。陰毛はダメ、許さない。ふふふ、これって道ばたで話すことじゃありませんよね」
  皆で笑う。
  マリンバが連れ出されると町の男たちが集まって来る。マリンバには、もはや人としての羞恥はなかった。牝になりきることでしか生きられない。そうした覚悟が町の者のたちには心からの謝罪と受け取られていたのである。
  留美は言った。
 「それもいいかと思ってますよ。髪を許して女に戻し、なのに裸で連れ回す。恥ずかしくて濡れるでしょ?」
 「なるほど、さすがボスだぜ、山賊らしいや」
  どれもこれもが軽いジョーク。皆がマリンバのスキンヘッドを撫でて去って行く。
 腰布のほか露わとなる素肌に傷らしきものがない。町の皆もそのことにほっとしている。

  狭い町中を散歩させて広い部屋へと戻った留美。そこはかつてのルッツの部屋でバートの一室。いまバートは町外れにさらに造った別の家に移っていて、留美の部屋となっていた。かつてのアニタの部屋にはマルグリットとパナラットが同棲するように棲んでいる。
  バートのベッドはキングサイズ。その脚にチェーンを回してマリンバをつないでおく。まさにペット。豚から犬に昇格したようなものだった。
  部屋に戻ってつながれるとマリンバは全裸にされる。犬のようにお座りして留美を見ている。邪念の消えたいい目をしている。留美はビスケットを食べようと手にしたものの、ふとマリンバを見て口の前へと突きつけてやる。
  キラキラ輝くマリンバの眸。手を使わず口を開けてほおばった。
 「まったくどうしてこうなるのやら」
  マリンバが可愛い存在となっている。飼育はミーアに任せていたが、ときどき責めて、そのときに泣いて果てる姿を見るうちに不思議な母性に衝き動かされ、いまではボスの部屋の番犬のようにそばに置く。
 「おいで」
 「はいボス」
  ベッドの下までほんの一歩を這ってきて、正座をして見上げるマリンバ。留美はその二つの乳首に手をのばし、そっとコネてやりながら眸を見つめる。
  切なげに眉間に皺を寄せるマリンバも、四十三歳になっていた。
 「いくつになっても綺麗よね、可愛いわよ」
 「はいボス。あぁぁ感じます、嬉しいです」
 「うん、いい子になってくれたもんだ。髪の毛ぐらいは許してあげようと思うんだけど、女に戻らないほうがおまえのため。眉毛だけで暮らしなさい」
 「はいボス、うぅン、濡れますボス」
  裸身がくねるマリンバ。
 「最初はね、体にピアスぐらいはしてやって鼻輪もいいかと思ってた。でもねマリンバ、あのバートがマリンバと名づけるぐらいおまえの姿は可愛いの。私よりもみんながとっくに・・」
  許していると言いかけたときドアが強くノックされた。

  入ってきたのはコネッサだった。黄色いショートパンツの弾けるような姿。
 「お客さんよ」
 「あら誰?」
 「ほら、あのときの兵隊さん」
 「ジョエル?」
 「そうそう。まるで私服、今日は非番なんですって」
  三年以上も会えていない。あのとき一度きりで、軍に頼らなければならないこともなかった町。留美はちょっと考えて、そのときもマリンバをちょっと見て、そしてコネッサに告げたのだった。
 「ここへお通しして」
 「ここへ? いいのそれで?」
  コネッサもまたマリンバを気にしている。
 「いいのよ、隠すことじゃないからね」
  コネッサはうなずくと、マリンバのスキンヘッドをそっと撫でて出て行った。
  わずかに緊張の眸色を浮かべたマリンバ。ベッドの下から少し離れた、毛布の敷かれた寝床へ戻って正座で控える。

 「こちらです、どうぞ」
  ドア向こうにコネッサの気配。そしてすぐにドアが開いた。
 「やあルミ」 と、ちょっと手を挙げて笑った刹那、素っ裸で毛のない女がつながれる景色に絶句するジョエル。ブルージーンにサマージャケットだったのだが、あの頃とは明らかに違う精悍さを身につけている。
 「驚かれました? かつてタイパンという凶賊がいて、これはそのボス。クイーンと呼ばれてた女なんです。いまではすっかり奴隷ですけど」
  タイパンに弟と殺されたことはデトレフから聞かされていたジョエル。なるほどとうなずいて歩み寄る。留美は椅子ではなくベッドに座ることを勧め、自分は立って椅子に座った。ベッドサイドに小さなテーブルが置かれてあって、それとセットの小さなウッドチェアである。
 「ここはルッツさんのお部屋でした。このベッドも」
  ジョエルはうなずき、留美と入れ替わってベッドに座る。
 「マリンバ、お客様よ、ご挨拶なさい」
 「はいボス」
  豊かな乳房をたわたわ揺らして犬のように歩み寄り、フロアに額を擦りつけて平伏す奴隷。上から見下ろせば背中からすぼまって張り出す女のラインが美しいはず。
 「ジョエル様よ。国連軍の軍人さんで、あなたが殺したルッツさんのお兄さんの部隊にいるの」
 「はい。はじめてお目にかかります、マリンバと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
  マリンバの面色が青ざめていた。ルッツの兄の部下。そう聞くだけで心が乱れるマリンバだった。
  ジョエルは言った。
 「わかった、もういい。傷のないその様子なら許されているようだ。とやかく言うこともないだろう。心して生きることだよ」
 「はいジョエル様、おやさしいお言葉をありがとうございます」
  留美は目を細めて様子をうかがう。さすがデトレフの右腕だけのことはある。
  留美は言った。
 「向こうを向いて四つん這いです。お尻を上げて恥ずかしいところをお見せしなさい」
 「はいボス、あぁぁ、はい!」

  マリンバの白い裸身が見る間に上気して染まっていく。背を向けて這い、尻を上げて脚を開く姿をジョエルは黙って見守って、しかし性器を見ようともしない。
  留美は言った。
 「それで今日はどのような?」
 「あ、はい、じつは大尉になったこと。いやまあ、そんなことはどうでもよくてルミさんに会ってみたくなりました。それだけです」
 「ほんとにそうなら嬉しいわ。デトレフさんはお元気?」
 「彼はもはや地球人ではありません」
 「まっ。ふふふ、それはそうかも」
  ジョエルは明るい。
 「ええ元気ですよ。無線でときどき話しますがルミさんのことも気にかけておいでです。あのときは時間がなくて、ほんとはゆっくりしたかったんだがって口惜しがってた」
 「弟さんのお店をぶんどるみたいになってしまって」
 「とんでもない、喜んでますよ、意思を継いでくれる女性だって言ってます」
  留美は心が揺れていた。私服のジョエルは若々しい。精悍そのもの。兵士としての角刈りの金髪もよく似合う。
 「私たちは山賊よ、意思を継ぐより何より生きること。このマリンバの姿もそうですが褒められた生き方なんてしていない」
  ジョエルは笑い、ちょっとうなずく素振りをする。
 「それを言うなら我々こそだ」
 「みたいですね。よしましょう、こんなお話。今日は非番だとか?」
 「しばらくぶりで三日ほど。今日がその初日というわけで」

  ふいに留美は問い質す。
 「ストレスは?」
  ジョエルは、その言葉の真意を探る眸色で苦笑する。
 「たまりませんね。一族みんながHIGHLYだからどうにもならない」
 「奥様は? 恋人とか?」
  ジョエルは今度こそ笑って、そんなものはいないと言った。軍にいて、とてもそんな気にはなれないと。
  留美は微笑む。
 「でしたらジョエル」
 「はい?」
 「私たちの流儀で過ごしませんか。LOWERでもない野蛮な流儀で」
 「ですね、そうできたら夢のようだ」
  留美はうなずいて微笑むと、ジョエルの右手を取って男の太い腿の上に置く。
 「は?」
 「こうするんです」
  握り拳をつくらせて太い親指だけを上向きに立たせておく。
 「マリンバおいで」
 「はいボス」
  尻を向けていたマリンバは振り向いてそんな様子を察すると、それだけで留美の意思をくみとって、ジョエルの腿にまたがってくる。
  眉毛のほか毛のない奴隷。白いデルタに裂溝は浮き立って、すでにそこは濡れていて、ジョエルの立てた親指に膣口をあてがうと一気に腰を沈めて貫いてくる。
 「自分でおっぱい揉みなさい。もっと腰を入れてよがり狂うんです」
  白い尻っぺたを叩いてやる。尻肉がブルルと波紋を伝えて震えていた。
 「はいボス。あぁぁいい、感じますマスター、あぁン! 嬉しい、あぁン!」
  指は静止。なのにヌチャヌチャ濡れ音をからませて抜き差しされる太い指。豊かな乳房を自ら揉んで乳首をツネり、腰を激しく使ってマリンバ自身を追い詰めていく。
  ジョエルは慈愛に満ちた眸の色で狂乱する奴隷を見上げ、留美はそんなジョエルの腿に手をやって横顔を見つめていた。
  亮の姿を思い出す。ジョエルは似ていると留美は思う。それはあのときからそうだった。眸の輝きがそっくりだと思っていた。

  このときジョエルは、上司デトレフが言った『なかなかの器だよ、ルミって子は』という言葉の意味を確かめてみようと考えていた。

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